プロの写真家による「ホタル写真集」は、何冊か出版されている。勿論、どれも素晴らしいホタルの写真ばかりである。撮影地は、すべてが全国的にも有名な「ホタルの里」で、こうした所はホタルが乱舞し、豊かな自然環境にも恵まれている場合が多いから多少の時間と撮影技術があれば、風景写真としては美しい作品に仕上がりやすい。風景写真家・動物写真家ならば、一度は撮っておきたいと思うだろう。また、これらはいつまでも残さなければならない日本の原風景であり、その情景を写真集という本で紹介することは大きな価値がある。ただ、ホタルの生息地は、プロカメラマンが目を向けない「絵にならない所」や「ホタルが数匹しか飛ばない所」もある。このホタル生態写真集は、2つの項目を除いて、すべて東京都内で撮影した東京の風景である。
ホタルがそこに生息し、自然発生している光景。大都市「東京」でも健気に生き抜いているホタルの姿がそこにはある。けっして遠い存在ではないのである。ホタルを乱獲や光害から守るために、撮影地の場所を公表することはできないが、これまで、写真家による「ホタルの写真集」には、一度も掲載されたことのない「東京にそだつホタル」の風景と姿を、是非とも知っていただきたい。また、このホタル生態写真集は、風景だけを収めたものではなく生態写真集でもある。発光するホタルの卵や蛹をはじめ、上陸する幼虫の写真など、ホタルの一生を通じてその生きている様子をすべて紹介している。知ることで、ホタルの保護と自然環境の保全のために何ができのるかを少しでも考えていただきたい。
東京都奥多摩町/ゲンジボタル