これまでのホタル撮影は、カメラという道具を使っていかにホタルを撮影するかという技術面を紹介いたしましたが、今回は、写真画像としてのホタル撮影の概念・考え方について触れておきたいと思います。
ホタルの写真撮影の目的の1つは、ホタルの一生や生活の様子を克明に、そして正確に撮影して伝えるということが挙げられます。ですから、ホタルが生活している自然環境において、本当の姿を撮影することが何より重要になります。これが、生態写真です。これらの記録は、昆虫学的にも貴重な資料となるばかりでなく、ホタルの保護を考える上でも大切なものとなります。しかしながら、生息地では困難な撮影もあります。蛹の変態の様子などは、土を掘り返すことになりますから、避けなければなりません。こういった場合は、装置で撮影せざるを得ませんが、なるべく生息地と同じ状況を再現し、ホタルが生息地と同じ行動をとるようにしなければ生態写真としては価値がありません。被写体が動かない卵や蛹などの撮影は容易ですが、成虫ではかなり動き回るので、撮影するためにはホタルの行動パターンを知っておく必要もあります。
生態写真は、一生を通じた生活の様子を撮影するわけですから、組写真として成り立つことも大切です。ある一瞬だけなく、連続した経過、時系列の変化などを捉えておく必要があります。こうしたホタルをはじめとする昆虫等の生態写真の撮影は、待つことが大切です。ホタルが卵から孵化する瞬間、羽化する瞬間などのシャッターチャンスは、その場面が訪れるまで待つしかありません。そして長い時間と年月が必要です。
ホタルの写真/ゲンジボタル生態写真集より
水中をめざす孵化したホタルの1齢幼虫
オリンパスOM−2 ズイコ−マクロ50mmF3.5 ベローズ、ストロボ使用
FUJICHROME PROVIA 400F
※画像をクリックすると拡大表示します。
BACK:ヒメボタルの写真撮影/NEXT:ホタルの風景写真