水温が11℃であるのにゲンジボタルの幼虫7匹はカワニナを食べている。カワニナは皆、飼育水槽の壁面にへばりついて動かない。
1978年1月5日ゲンジボタルの幼虫の姿が見えない。水底の砂の中や石の下に潜っているのだ。
カワニナもふたを閉じて底でじっとしている。
2層式飼育水槽の下部水槽に落ちていた幼虫を上部水槽に戻した。しばらくヒーターによって水温を15℃に保つ。
1978年1月8日
今日は近くの林の清水を採取してきた。水田の水よりもいいようである。ゲンジボタルの幼虫もカワニナもじっとして動かない。
1978年1月10日浅田先生から年賀状が届いた。今年は、3種類のホタルを一緒に光らせたいと書かれていた。僕もがんばるぞ!
1978年1月13日この2,3日、ゲンジボタルはカワニナをまったく食べていない。水温は13℃。
1978年1月18日今日は朝から雪が降り続いている。とても寒い。水田のヘイケボタルの幼虫は平気なのだろうか。
1978年1月23日 水道水が使えるか?水道水にハイポというカルキ抜き剤を入れて、ヘイケボタルの幼虫を入れてみた。何とか大丈夫そうだ。ゲンジボタルでも大丈夫だろうか。
1978年1月29日葛飾区の水元公園からタナゴを2匹採集してきた。2層式飼育水槽の下部水槽に入れた。
1978年1月31日多摩動物公園「昆虫愛好会」に入会した。
1978年2月05日また、葛飾区の水元公園からタナゴを2匹採集してきた。ゲンジボタルの幼虫は全然変化がない。ただ、じっとしている。
1978年2月09日ヒーターで水温を20℃に保つようにした。ゲンジボタルの幼虫が5匹、土の中から出てきた。
1978年2月20日飼育水槽を見ると、カワニナがかなり死んでいて水が濁っている。このままでは全滅してしまうかも知れない。室内の飼育水槽のものはみな元気でいる。水温のためであろうか。
1978年2月29日今日は、2年前にはじめてヘイケボタルの幼虫の上陸を見た、記念日である。今日も同じような気温と湿度で、「春一番」が吹いた。しかし、本年は上陸しなかった。
1978年3月02日今日はとても温かい日である。ゲンジボタルの幼虫の脱皮殻も多くある。水温は20℃で、カワニナ生存数1匹。カワニナが次々と死んでいく。原因の1つは、水温の急激な変化である。水温6℃から、ヒーターを使って20℃に上げたからだと思う。
1978年3月3日カワニナがなくなってしまった。代用食を探す実験をしてみた。シジミやサザエ、イカの切り身を与えたが、はじめは近づいても結局食べなかった。
ゲンジボタルの幼虫の体をガラス棒で押すと、鰓の近くから白く透き通ったものが出てくる。一体何なのだろうか。(後に、外敵に対して匂いを出すものと解る)
1978年3月19日
近所にカワニナの生息地を発見した。ホタルは生息していない。これで安心だ。
1978年3月20日ゲンジボタルの幼虫は丸々と太っている。カワニナを与えるとすぐに食べた。
1978年3月22日5mmのホタルの幼虫がまだ沢山いて、あちこち動き回っている。1cmの幼虫はカワニナを食べている。
カワニナの食べ方
・幼虫はあちこち歩き回って餌を探す。
・ある物にぶつかると触角で確認する。
・カワニナであれば、後ろから殻に登り、攻撃する。
・口から針を出して、毒液を注射する。
・消化液を出して肉を溶かしてすする。
1978年4月04日
朝9時から、水田の生態調査に出かけた。肉眼で確認できる動植物をまとめた。
ケンミジンコ、ボウフラ、モノアラガイ、アカガエルの幼生が特に多い。
バトリック法やBeck-Tsuda法によって水質判定すると、α中腐水性(やや汚染)という結果が出た。
これまでの飼育方法を見直す。飼育装置の中にも自然界と同じ食物連鎖を取り入れないと、カワニナも増えない。新しく2層式の上陸装置をつくり、下部層には、ホテイアオイを浮かべ、タナゴを入れた。そして大量の石灰石を入れた。
1978年4月10日
さまざまな飼育水槽の構想を練る。設計図を書き、飼育計画を立てる。
上陸用装置を試作する。
1978年4月20日
ころごろホタル幼虫はカワニナを全然食べていない。植木鉢や石の下でじっとしている。
ウィンクラ−法による溶存酸素の比較実験を行った。塩化マンガン、ヨウ化カリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、蒸留水を使用して調べるが、薬品の入手に時間がかかった。清水、飼育水、水道水、池の水と比べたが、飼育水は水道水の溶存酸素量に近いことがわかった。
1978年4月29日水槽の点検をした。かなりのゴミが石の上にある。植木鉢をどかすと2cmもある大きいヘイケボタルの幼虫が出てきた。ゲンジボタルが見あたらない。
1978年5月04日17時に観察する。植木鉢をどけると2.2cmのゲンジボタルの幼虫がいた。ようやく出てきてくれた。さっそく写真を撮った。
1978年5月11日随分と雨が続く。しかしホタルの幼虫は全然上陸しない。何故なんだろうか。飼育装置に蓋をして、1日中、暗くしているからだろうか。念のため、蓋を取ってみた。
1978年5月14日またカワニナが次々と死んでいく。何故だろう。飼育装置の材料である発泡スチロールの影響か?
1978年5月19日最新型の上陸用飼育装置作りを開始する。発泡スチロールとセメントを利用したものだ。
カワニナ専用の飼育水槽には、川魚が入れてあり、石灰石には珪藻類が繁殖している。とてもいい状態で、カワニナは元気だ。
1978年5月27日21時に観察すると、2匹のホタルの幼虫が発光していた。いつみても美しい。はやく上陸してほしい。
1978年6月01日17時。ホタルの幼虫を上陸用飼育装置に移動する。セメントを使用しているのでphが8近くある。かなりアルカリ性である。まず、カワニナを入れてみる。とても元気だ。そして次に幼虫27匹を移動した。21時。大きな石灰石をどかすと、5匹の幼虫が同時に発光した。
1978年6月04日まだホタルの幼虫は上陸しない。上陸用飼育装置にヒーターを取り付け、水温を25℃に保つようにしてみた。幼虫は、カワニナを食べている。
1978年6月24日 ようやく上陸22時、上陸用飼育装置をみると、幼虫が土の上で発光していた。ようやく上陸である。水温は25℃で一定。朝夕に霧吹きで土に水をかけている。
1978年6月26日 カワニナの繁殖カワニナの親貝は、順調に稚貝を産んでいる。217個の稚貝を産んでいる。カワニナの飼育で餌とするものは、白菜が一番いいようだ。野草の「はこべ」もよく食べる。ほうれん草は全然食べない。米糠もいいが、水がすぐ汚れてしまうので、やはり植物がいいようだ。
1978年7月11日 成虫発生昨年よりも21日遅く、ヘイケボタルの成虫が羽化して出てきた。体長8mmのオスのホタルである。
この後の飼育日誌は、残念ながら記録を書き留めた貴重なノートを紛失してしまい、掲載することができません。前 項[ゲンジボタル・ヘイケボタルの飼育と観察日誌(1977年)] / 次 項[ゲンジボタルの飼育と観察日誌(2002年6月〜8月)]
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