ホタル百科事典/ホタルに関する調査研究レポート
2004年は、たいへん降雨日が少なく、幼虫上陸時期においても上陸時間の午後21時前後に雨が降ったのは僅か5日間であった。以下の3地区においては、それぞれ4月19日、5月5日、5月19日に上陸が観察され、6月2日、12日、22日に発生が見られた。
発生初日はいずれも前日が降雨日になっており(これも数少ない降雨日)、当日は最高気温が25℃を越える夏日であった。初日からかなりの数が発生し、その一週間後がピークとなったが、さらに一週間すると発生(飛翔)はひじょうに減少していた。
通常、ゲンジボタルの発生期間は、3週間から4週間くらいあるが、2004年は2週間から3週間前後であった。これは、月平均気温が22.1℃、平年値の109%という高温であったことが原因になっていると思われる。さらに、梅雨という時期でありながら、6月の降雨日が9日と少なく、そのために気温に大きな寒暖差がなく、下旬に向けて上昇する一方であったことも挙げられる。(グラフ1)つまり、ゲンジボタルの発生期間中に気温が高い日が続いたことで、代謝が早まり生理的寿命を短くしたと考えられる。
過去四年間の6月の平均気温の推移をグラフ2に示した。2004年は、中旬頃までは20℃前後を推移し、過去四年間と同じような気温であったが、17日頃より25℃前後まで上昇し、そのまま推移した。このことが、例年6月下旬から7月上旬に発生する場所のゲンジボタルの発生を早めた。
次に前号で示した有効積算温度と本年の上陸日から発生までの有効積算温度を比較した。
計算式 Σ(x-a)=k
x ; 平均気温・地温 (℃)
a ; 発育零点8.02(℃)
k
; 有効積算温度408.4 (Day℃)
これにより、3地区の積算温度を計算すると以下のようになる。
室内飼育の結果から算出した有効積算温度であるが、自然界でもほぼ同じ数値であることから、信憑性も高いと思われる。しかしながら、地域性や年による誤差もあると考えられるので、今後さらに多くのデータから検証する必要はある。
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