ホタル百科事典/ホタルに関する調査研究レポート
都立狭山自然公園は、武蔵野の一角に浮かぶように位置する楕円形の自然公園で、北側は埼玉県との境になっている。箱根ヶ崎から東村山にかけて三条の尾根と二条の渓谷がはしり、中央の丘陵には村山、山口の2つの貯水池があり、その周辺は水源林となっている。
○○第五小学校の北側に広がる○○谷津は、六道山文化の森を中心としたこの都立狭山自然公園の一部であり、コナラ、クヌギなどの落葉広葉樹を主としたアカマツ、エゴノキ、リョウブからなる雑木林、そこを源とするわき水、そして湿原、小川があり、これらが1セットになった典型的な谷津の形状を呈している。
生息生物としては、東京の生態的に優れた谷津に見られる代表的なトウキョウサンショウウオ、カワニナ、ゲンジボタルが確認されている。
生態系の特徴
元来、谷津(谷戸田)は稲作水田によって複雑で複合的な生態系が形成されている。水田が様々な生物を育てていると言えるが、滝田谷津においては休耕田及び放棄による湿地化が大部分で進んでおり、土砂の流入、植物の繁茂により乾燥化・草原化へ進行しつつある。現在においても、渇水期には十分な流れが供給できなくなり、水生生物の減少につながると考えられる。
ホタルの生息条件から滝田谷津の物理的環境を見ると、ホタルの生活の大部分を占める流れについて、いくつかの問題点がある。
この中でも、小川の底質が細土であることは、ゲンジボタルの幼虫の成育を大きく妨げている要因になっていると考えられる。元来、ゲンジボタルの幼虫は、大半を様々な大きさの石が重なり合った、いわゆる「浮き石」の下に潜り込んで生活している。決して幼虫自身が掘っていくのではなく、自然と存在するそのような環境に身を隠しているが、底質が細土の場合、細土の表面近くの柔らかい部分に埋もれているか、岸辺近くの枯葉等の下に隠れて生活することが多い。このことは、大雨による増水で一気に流される危険性が大きい。
また、カワニナを捕食することにも支障がある。こうした環境にもカワニナはよく適合し、主に水中に落ちた枯れ葉や腐った葉、底質の細土中の有機物を食べ、繁殖するが、ホタルの幼虫にとっては体半分が細土中に埋もれたカワニナを捕食することは、難しいと言える。
これら要因が、ホタルの繁殖を妨げ毎年の飛翔数が20頭前後という結果をもたらしていると考えられる。
最終的には、東京都環境局に対して「里山とホタル保全に関する提案書・要望書」を提出し、協議の上で理想的な環境保全を行うことが必要であるが、当面はホタルの繁殖数を少しでも多くする有効な手段として、幼虫の放流が挙げられる。しかし、幼虫を大きくなるまで飼育し、2月〜3月頃に放流するのでは、生態学上まったく意味がない。方法としては、
BACK[ホタル幼虫の上陸と気象について] NEXT[ゲンジボタルの発生に及ぼす温暖化の影響について]
ホタルのために、知識と感性と意識を / Copyright (C) 2001-2024 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.