ホタル撮影の方法/私の撮影機材

東京にそだつホタル


ヒメボタル

ヒメボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICOLOR NATURA 1600
(2009.07.11 東京都奥多摩町)
※画像をクリックすると拡大表示します。

僅かであるが東京都にもヒメボタルが生息している。この場所は、国道から沢沿いの道を5Kmほど進み、さらに林道を3Km弱登った峠近くである。2004年から通っているが、なかなか良い写真を撮ることができなかった。2004年は、雨が降っておりヒメボタルも数匹しか飛んでいなかった。2005年は、数え切れないほどのヒメボタルが乱舞していたが、撮影技術が確立しておらず、まったく写らなかった。2006年に訪れた時は、発生がゼロの状態。この場所でのヒメボタルの発生期間は、およそ10日ほど。私は週末の土曜日しか訪れることができない。つまり、ヒメボタルの発生ピークと私の都合が、まず合致しなければならない。そして次に天候状況がよくなければならない。結局、6年の月日が過ぎ、ようやく2009年7月に何とか満足できるヒメボタルの飛翔風景を撮影することができた。

18時、まだ明るい時間に到着し、カメラを据える。静かに夜を待つ。19時半。ヒメボタルが光り始める。落ち着いてシャッターを切る。OLYMPUS OM-2 に ZUIKO 50mm 、ネガフィルムでの長時間露光である。合成写真ではない。露光している長い間は、ヒメボタルの行動をじっくりと観察。21時。辺りは真っ暗で、一寸先も見えない。時折、鵺(トラツグミ)の不気味な声が林に響き、落ち葉が斜面を転がる音がするだけで、静寂そのものである。丁度このカットを撮影している時に、その静寂をうち消すように、背後の雑木林から下草を力強く踏みしめる大きな音がしてきた。ゆっくりと右へ左へ、そして近づいてくる。ツキノワグマである。昨今、奥多摩では頻繁に出没しているらしいが、まさかこの場所で出くわすとは思わなかった。ましてこんな所に一人きりである。音を出せばよいのか、静かにしていればよいのか・・・ただ、6年かけてやっと遭遇したこのチャンスを逃すわけにはいかず、恐怖と戦いながら撮影を続けた。十分な露光時間が過ぎたのを確認した後、急いで撤収。麓までの長い道のり、恐怖心は続いていた。

このヒメボタルの写真は、峠の杉林の斜面を地上1m程の高さで発光しながら登っていく姿が写っている。途中で垂直方向に飛ぶヒメボタルや、斜面をかなりのスピードで降りていく姿も写っている。背景も適度に写し出すことができた貴重な一枚であると思っている。

BACK:ホタルの風景写真/NEXT:ホタル鑑賞と撮影のマナー