ホタル百科事典/低山地の渓流
もう1つのゲンジボタルの生息環境の分類として、標高200m〜800mの低山地を水源とする川の上流部があります。渓流と言っても勾配はあまりなく、川幅は3m〜8mで比較的緩やかに流れています。しかしながら、大きな岩や瀬、淵などが多く存在し、上流部の形態を呈しているのが特徴です。
武蔵五日市と日原間の小河内層群は、砂岩、粘板岩、石灰岩で構成されており、また、石灰岩はレンズ状に点々と分布しています。鍾乳洞がおよそ60カ所もあり、河川には炭酸カルシウムが豊富に含まれています。
東京都の断面図 (○ゲンジボタル生息地)
生息地周辺の断面図 (○ゲンジボタル生息地)
上空から見た里山及び低山地周辺
B地区
C地区
D地区
この写真の3カ所は、最上流部からおよそ2〜3キロメートル下流で比較的穏やかに流れる渓流部です。流れの幅は、狭いところで3メートル、広いところでは7〜8メートルほどです。この付近の地層は、広く古生層が分布していて付近一帯は厚い石灰岩で覆われています。そのため鍾乳洞も多く、またセメント工場も点在しています。これら3つの生息地は、前述の地区に比べひじょうに生息数は少なく、特にB地区を除く2カ所は、すぐ脇を舗装道路が走り交通量も決して少ないとは言えない状況です。また、街灯も等間隔に設置されています。
E地区
上記の3カ所とは違ってこのE地区の生息地は、谷もかなり深くなった沢の渓流です。地域の中でも特に発生数の多い沢は、多摩川に注ぐまで約2.5キロメートルありますが、発生する区間は最上流部からおよそ1キロメートルほど下流で、300メートルの間だけです。この区間の特徴としては、高低差があまりなく、川幅は約1メートルほどで、水深は深いところでも50センチメートルくらいです。水量も豊富で水流もありますが、適度に蛇行しているために、緩やかな所も多々あります。また広く平坦な川岸が両側に2〜5メートルあり、土が見えないほど一面を草で覆われています。川岸が広いために日当たりも良くなっています。
これら低山地の渓流に生息するゲンジボタルのほとんどは、西日本から持ち込まれ放流されたゲンジボタルが定着して自然発生しているものです。
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