ホタル百科事典/ホタル保護・保全の課題と手法

東京にそだつホタル

ホタル保護・保全の課題と手法

今後のホタル保護・保全における課題

  これまでの様々な状況を踏まえると、今後の「ホタル保護・保全における課題」は、次に挙げる8つの事柄を守ることが重要です。

  1. 「人のためではなく、ホタルのために」を理念にする。
  2. 地主及び社会の認識と理解を得る。
  3. ホタル自生地の保全を最優先とする。
  4. ホタルの生態とホタルを取り巻く生態系を理解し、何よりもまず、自然生態系の保護・保全・再生に努める。
  5. 固有種を保存する上で、自生地域には、他地域のホタルを持ち込まない。持ち込む場合は、同水系のホタルに限る。
  6. ホタルは養殖業者から絶対に購入しない。
  7. 幼虫の放流は、数量管理する。
  8. 以上が守れないならば、断念する。

ホタル保護・保全活動に向けての留意点

  では、上の課題を解決しつつ、今後具体的なホタル保護・保全活動を進めていくためには、どのようなことが必要なのでしょうか。

ホタルに関する活動の目的を明確化する

  現状を把握し、どのようなことを目的とするのかを明確にすることが必要。

  1. 自然河川の保護・保全又は復元
  2. 人工河川によるホタルの復活
  3. 現存する固有種の保護と生息地の保全
  4. 絶滅寸前の固有種の保護と環境の再生
  5. 絶滅したホタルの復活と環境の復元

ホタル保護・保全グループ・推進団体などの結成

  「自然(ホタル)と人間が共存する」里山環境の必要性に関する理念・理想を持ち、地主及び地域社会の認識と理解を得ることが必要。

ホタル生息地の環境調査

  現存するホタルの生息地の環境を調査するに当たっては、生態学・生物学・環境学をはじめホタルに関する専門的な知識も必要。

  1. ホタル、カワニナの生息状況、繁殖状況
  2. 発生数(個体数)と分布域のモニタリング
  3. その他水生生物の生息調査
  4. 水系の水質調査
  5. 地域全体の植生、生息動物等の調査
  6. 物理的環境をふくめた生態系調査
  7. 周辺地域の土地利用、開発計画調査    など

ホタル保護・保全方法の検討、対策、計画立案

  調査結果に基づいて現状の問題点や課題を整理し、現存する生息地の環境保全あるいは再生の計画、または新規地域への固有種の移動等の計画を立案する。

  1. 減少要因の解明
  2. 個体群動態解析及び個体群存続可能性分析( Population Viability Analysis)

ホタル生息地の環境整備

  環境整備の具体的作業に当たっては、専門的技術が必要。

  1. 水源林の管理(ブナ、クヌギ、コナラなど落葉樹の植林)による水源そのものの安定確保と水量、水質の安定確保
  2. 水質浄化−農薬、家庭排水混入の断絶
  3. 河川改修工法の改良(ホタル護岸・近自然河川工法)
  4. 水底質や水辺環境の改善
  5. 水辺林(雑木林)の管理による生息河川への日当り度や落葉量の調整
  6. 土壌改良
  7. 休耕田の水田化(不耕起栽培)
  8. 人工灯の撤去     など

F.カワニナ放流と繁殖定着

  ホタルの生息、繁殖、発生数は、カワニナのそれに比例するが、あくまでカワニナが自然繁殖することを目的に、その定着度合いをよく調査し、問題があれば環境を改善するという方法をとる。生態系のバランスを無視することは行わない。他の地域のカワニナや貝は絶対に放流しない。

ホタル幼虫放流の数量管理

  ホタルの幼虫放流は当初3段階に分け(孵化後、11月、翌2月)、毎年の発生数とカワニナの繁殖定着状況によって(孵化後、11月)→(孵化後)→放流なしというように放流そのものを減らしていき、河川で一生を過ごして発生したホタルの数を把握する。
  最終的には、生態系の中で自然発生するようにする。それは、種ボタルを採集しない、幼虫の飼育をしない、放流は行わないことであり、結果として乱舞しなくとも、生態系のバランスを無視することは行わない。

ホタル保護・保全の戦略的長期計画と継続努力

  ホタルや自然環境の保護・保全・再生の結果は、すぐに出るものではなく長い期間が必要であり、それまでも、そしてそれからも永年に渡って弛まぬ努力を要する。
  季節的な「ホタルまつり」を通じてだけでなく、年間継続的にホタルや自然に関する勉強会や観察会を行うとともに、ボランティア団体等による洗剤追放や環境美化、そして自然保護などのPR運動を行ったり、また、地方自治体の制度的なバックアップを得るなどの社会全体の協力も必要である。

ホタル保護・保全に対する地域住民の環境意識の昂揚と実践

  地域住民が環境のための3つの”R”をよく理解し実践することが大切である。

  1. Reduce  減  量
  2. Reuse   再使用
  3. Recycle 再利用

ホタルは、人が直接育てるものではなく、自然環境で育つものです。ですから、私たちは人工的なホタルビオトープを作ってホタルを育てるのではなく、ホタルを育てる里山環境を保全したり、再生することに努力しなければなりません。


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