ホタル百科事典/ホタルに関わる活動の現状
昨今、環境に対する関心が高まり、ホタルに関わる活動が盛んになってきました。
1989年に環境庁がまとめた「ふるさと いきものの里100選」では、その7割がホタルを身近な自然の復元の象徴として扱っています。同じ時期に施行された「ふるさと創生事業」でも、ホタルの里づくりや復活対策などハード的事業がたいへん多く行われました。また、ホタル保護を目的とする様々な団体も各地にひじょうに多く存在しています。これらの団体では、河川環境の整備を行ったり、ホタルの増殖に力を入れたり、その季節にはパトロールなどを行いながら、ホタル鑑賞会やホタルまつりなどを開催しています。また、市や町ぐるみで条例をつくり、農薬や合成洗剤を規制することによって絶滅寸前のホタルが大量に復活した地域が沢山あります。また、それに加え環境も整備し、ホタルの小川を新たに建設し、町民が一丸となって保護に努めている場所も沢山あります。これら様々な地域の活動は、以下のように整理できます。
1.現在、ホタルが自然発生している地域での活動
2.かつてホタルが自然発生していた地域での活動
3.ホタルの生息地ではない地域においての活動
4.ホタルまつり
ホタルの生息する河川
全国のホタル発生地においての活動で一番多く取られている方法は、自然の流域はそのままにして、そこに流れ込む家庭排水や農薬などをシャットアウトし水質汚染を防ぐというものです。そして、地域のホタル保護団体や個人が毎年発生地より種ボタルを採集し、水槽などで幼虫を人工養殖した後、幼虫をもとの川へ放流しています。これらの活動により、毎年ホタルが乱舞するという成果を上げています。
ホタル護岸された河川
次に、治水と自然環境の保全を調和させた河川改修を行い、現在少数でも発生している場所やかつて発生していた場所において、ホタルを呼び戻す活動がされています。例えば、下水道を完備し、現在汚染されている小川を美しいせせらぎとして再生しています。せせらぎへの再生は、可能な限り自然河川の物理的環境要素を取り入れる配慮がされています。例えば護岸は、画一的な三面護岸ではなく、漁礁ブロックにより護岸壁に土が詰まるようにしたり、中州を人工的につくり水生植物を植栽したりしています。そして、ホタルを採集して幼虫を人工養殖し、あるいは、そこに生息していない地域であれば他の地域からホタルを譲り受けて人工養殖し、改修の行った川へ放流するという方法がとられています。
図.ホタル護岸の平面図及び断面図
長野県の辰野町は、かつては諏訪湖から流れる天竜川にホタルが自然発生していましたが、現在は、天竜川から取水した人工水路において、数万匹のホタルが乱舞しています。また同じく長野県の塩尻市でも、みどり湖から流れる田川は現在人工のホタル水路に生まれ変わっています。
などを特に留意して設計されています。環境が安定するまでに数年を要しますが、カワニナが定着すればホタルの数も自然と増えてきます。
公園などの敷地内にハウスを建設し、その中にホタルの小川を流すというもので、東京都内においてもいくつかあり、ホタルの沢山の羽化に成功しています。水はきれいに濾過され循環しています。雨はスプリンクラーから降ってきます。このハウスの中には、ホタルだけでなく他の様々な昆虫・動物・植物がくらしています。(下の写真の施設は、現在はありません。)
新聞記事に「ホタルの復活」が取り上げられることも多くなりました。しかし、その多くは、人工飼育、人工養殖によるものです。それは、水槽で過保護に育てられた幼虫を、3月頃に水路や小川に放流するという方法がとられています。
ホタルがたくさん飛んでいても、ホタルが自然発生する豊かな環境が戻っているとは言えない場所が多くあります。
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