ヒメボタルの写真撮影は、基本的にゲンジボタル等の風景写真撮影と同じですが、必ず単焦点F1.2〜F1.8くらいの明るいレンズを装着します。カメラは三脚に固定して、シャッタ−ボタンにレリ−ズを付け、レンズの絞りは開放にします。ヒメボタルの生息場所は森等の中であり、発光する時間帯には真っ暗闇になります。優れたレンズの持ち主である人間の目にでさえ、暗闇で発光するヒメボタルの光しか見えません。ヒメボタルがたくさん飛んでいる時間にシャッタ−を切っても、写るのはヒメボタルの光だけで、何時間露光しても背景は撮影できません。暗闇と木立のシルエットとヒメボタルの発光写真は、ある意味人間が見ている風景に一番近いと言えます。逆に月が出ていると木立から洩れる明かりで昼間のような写真になり、ヒメボタルの発光も見えなくなってしまいます。ヒメボタル写真の撮影は、いかに背景をバランスよく写し込むかにあります。
フィルムは、リバーサルフィルム使用する場合は、ISO400のフィルムを2段増感します。ネガフィルムの場合はISO1600のものを選びます。長時間露光をしますので、相反則不軌を考えればネガフィルムの方が良い結果が得られますが、粒子の粗い仕上がりになります。生息地の物理的条件にもよりますが、真っ暗になる少し前からバルブで撮影を開始する方法をとります。デジタルカメラの場合は、ゲンジボタル等の風景写真撮影と同じ方法で撮影します。ISO400で2〜3分程度露光しても撮影できます。余り感度を上げすぎますと、昼間のように明るくなってしまいます。そのため、予め背景を撮影しておき、その後30秒程の露光で撮影したヒメボタルの光跡をパソコン上で数十枚合成する方法が行われています。ただし、「ホタルの風景写真を撮影する」の項でも解説したように、”写真は空間芸術であり、時間芸術である”とするならば、多重露光やパソコンでの合成という不連続の時間を一枚にまとめて見せるのは、どんなに見た目に美しくとも”写真”としての芸術的価値や”ホタル写真の生態学的価値”はありません。
飛び始めた時に撮影したヒメボタル写真(まだ薄暗いので、背景もきれいに写る)
オリンパスOM−2 ズイコー50mmF1.8 / フジカラー NATURA 1600
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暗くなってから撮影したヒメボタル写真(長時間露光でも背景は、ほとんど写らない)
オリンパスOM−2 ズイコー50mmF1.8 / フジクロ−ムプロビア400X
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薄暗い時間から長時間露光で撮影したヒメボタル写真
オリンパスOM−2 ズイコー50mmF1.8 / フジカラー NATURA 1600
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