ホタル撮影の方法/私の撮影機材

東京にそだつホタル


ホタル風景写真の撮影方法

ホタルが乱舞する風景を撮影する

小川で乱舞するホタル写真の撮り方

カメラは、銀塩でもデジタルでも一眼レフが適しています。ホタル風景写真の撮影は、ストロボを使わない長時間露光になります。シャッターにバルブ機能がついていないコンパクトカメラでは撮影できません。よくストロボをたいて撮影している鑑賞者の方がいらっしゃいますが、ホタルの光は全く写りません。それよりも、生息しているホタルに悪影響を及ぼしてしまいますので、ストロボ撮影は避けなければなりません。
一眼レフカメラには、単焦点レンズF1.2〜F1.8くらいの明るいものを装着します。ズームレンズでは、明るさや解像度の点で劣ります。(広角レンズならば、F2.8のもの)
カメラは三脚に固定して、シャッタ−ボタンにレリ−ズを付けます。長時間露光になりますので、足場もしっかりしていないと、ぶれた写真になってしまいます。また、暗くなってからでは、ピント合わせも難しくなります。開放時のF値が明るいレンズならば、闇夜に飛んでいる蛍の光を見ながら、その光にピントを合わせることもできますが、明るい内に構図やピントを合わせておいた方が良いと思います。
レンズの絞りは基本的には開放で撮影しますが、1段絞るようにしますとよりシャープなホタル風景写真が撮影できます。都心の夜景撮影と違い、ホタルが飛んでいる場所はかなり暗く、カメラのAEはもちろん、露出計も役に立ちません。カメラの露出はマニュアルにしバルブを開放にして、露出時間を変える段階露出で撮影したほうがよいでしょう。

銀塩カメラでのホタル撮影

バルブでの長時間露光撮影が基本

これまで、ホタル写真撮り方で一般的なのは、フィルムでした。フィルムは、撮影場所の物理的環境、つまりどのくらいの明るさかによって使い分けることができます。また、同じ場所でも日没後の経過時間によっても明るさが変化します。谷戸田のように開けた明るい場所では、ISO200での長時間露光が可能です。ISO800以上の高感度フィルムでの長時間露光では、背景が昼間のように明るく写ってしまう可能性があります。逆に林間の渓流など暗い場所において低感度フィルムを使用すると、背景もホタルの光もまったく写らない可能性があります。ホタルの乱舞する風景写真の撮影には、概ねISO400のフィルムが良いでしょう。リバーサルフィルムならばフジクロ−ムプロビア400X、ネガフィルムならばFUJICOLOR PRO400 Professionalなどが適しています。
露光時間は4分〜10分程度、その場所の明るさにより調節します。通常、フィルムは長時間露光には適していません。長時間露光すると感度も悪くなり、相反則不軌の影響で色再現性も悪くなりますので色補正と露光量補正が必要になります。(前項参照)増感現像も場合によっては効果が期待できますが、コントラストが強くなり、更には粒子が粗くなるというマイナス要因も覚悟しなければなりません。さまざまな場所でいろいろと撮影し、データを蓄積しておきましょう。
ホタル風景写真のポイントは、いかに背景を写し込むかにあります。ホタルの乱舞と夜の雰囲気のある背景を美しい1枚の写真として完成させることです。それにはホタルの生息地・撮影地選びも大切になります。人が多く鑑賞にくる場所では、懐中電灯や車の光が入ってしまい、鑑賞者のマナーがとても悪い場合は撮影はできません。また、少しばかりの街灯の光でも、長時間露光の場合、昼間のように明るくなってしまいます。場合によっては、背景をまず撮影しておき、ホタルの光は後から多重露光するという方法もありますが、ホタルが飛んでいる時間とは違う光線と明暗の背景ですので、時間の連続性がなくなってしまい、どこか不自然な感じになってしまいます。写真の芸術性とホタルの生態学的観点から、多重露光は好ましくありません。

ゲンジボタルの光跡の写真
ゲンジボタル/オリンパスOM−2 ズイコ−50mmF1.8   EPJ-135   F2.8  5分露光
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デジタルカメラのホタル撮影

合成はせずに、フィルムカメラ同様の長時間露光での撮影が基本

デジタルカメラの普及でホタル写真撮り方も簡単になりました。デジタルカメラでは、10〜30秒ほどの露光時間で撮影したもの数枚をPhotoshop等の画像処理ソフトで合成する方法が一般的のようです。まず、薄暗い時間に背景だけを撮影します。F値を絞ってシャープな画像を得ます。その後、暗くなってホタルが舞いだしたら、同じ場所でF値を開放にしてホタルの光跡だけをノイズが許容範囲内の秒数(10〜30秒)の画像を数十枚ほど撮影します。(ISO200〜400)これらをPhotoshopのレイヤーを使って合成すれば、1枚の写真が出来上がります。背景カットと蛍カットの1枚目を開いて、蛍カットのほうを選択範囲のすべてを選択します。[編集]→[コピー]で、背景カットにペーストします。このときレイヤー効果の描画モードを比較(明)にします。その後レイヤーを統合すれば完成です。これを繰り返して撮影した蛍カットを数十枚重ねていきます。ホタルの光跡の量は、重ね合わせる枚数で調節することが出来ます。
こうしたデジタルカメラによる合成写真は、ホタル風景写真の生態学的価値はありません。30秒露光を10枚重ねれば、銀塩の5分露光と同じと考える方もいらっしゃいますが、実は同じではありません。露光時間が短いために、1匹のホタルが尾を引く長い光跡は写すことができず、更には、時間の連続性がないために実際の飛翔状態を写すことはできません。また、背景を夕方に撮影しておいたものを合成する場合は、同じ場所でも時間がまったく異なりますので、別の風景を合成することと同じです。「写真は空間芸術であると同時に時間芸術であり、不連続の時間を一枚にまとめて見せるのは浅慮、浅薄にすぎない。」との意見もあります。デジタルカメラのホタル撮影は、合成はせずに、フィルムカメラ同様の長時間露光での撮影を基本とすべきです。
昨今では、デジタルカメラの性能も向上し、長時間露光でもノイズが軽減されるようになってきており、もはやフィルム以上の美しさと表現力さえ感じます。下のホタル風景写真は、1分半強という露光で撮影した写真ですが、たいへん自然な写真です。
デジタルの場合、フィルムのような相反則不軌はなく、長時間露光のための補正も必要ありません。フィルムと同じ感度で撮影した場合、露光時間はフィルムの半分以下になります。RAWで撮影し、PCで現像することが一般的ですが、画像処理ソフトでの補正に頼るのではなく、撮影時においてRAWデータに正確な情報を取り込んでおくことが必要です。デジタルカメラでのホタル風景写真の撮影は、フィルムでの撮影と同じです。

ゲンジボタルの光跡の写真
Canon EOS 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / F1.4 ISO400 100秒露光で合成なし
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