ゲンジボタルの幼虫の上陸用水槽を設置して、一週間がたった。水槽は3時間ほど木漏れ日があたる場所にあるために、ガラス水槽であっても極端に内部の温度が上がることはないようである。本日は、上陸用水槽の陸の部分にハコベ・オオイヌノフグリなどを植え、落ち葉を散らした。大夫自然に近い環境になってきた。
上の写真は、先週の設置直後のものである。水の部分をプラスチックケースで分けたのは、用土にピートモスを使用したために(強酸性)水質がこれまでの飼育の場合と違ってしまうからである。ただし、上陸しやすいように、陸地側には石を盛ってある。
用土はとてもいい状態(とても柔らかく、保水性も良い)を保っている。以前の飼育では、これほどの量の用土を使用しなかった。今回は、陸の部分を多くし、傾斜を持たせて、しかも深さは5cm〜20cmとした。ゲンジボタル幼虫が上陸しても、条件しだいでは羽化率がかなり低下してしまうからである。
水換えは、1週間に1回とした。カワニナは2〜3個投入し、食べ終えれば補充するという方法にした。
水温が低くても幼虫はカワニナを食べ、夜間には這い回っている。
カワニナを投入すると、その数と同じだけの幼虫が食べている。水温は21時で6℃。23時には4℃まで低下。這い回る幼虫はいない。カワニナを食べている2匹以外は、全然姿を現さない。石の下や落ち葉の下でじっとしている。春の訪れを知るには、この低温を経験することが大切なのだろうか。
2003年2月08日観察日誌の更新が滞っているが、さぼっているのではなく、ゲンジボタルの幼虫の変化がほとんどないのである。
本日は九州地方で「春一番」が吹いたそうである。春は着実に近づいている。随分と夜明けも早くなり、また日の入りも遅くなった。日差しも少しずつ強くなり、穏やかな日は春の気配を感じる。3週間ぶりにカワニナ採取に出かけた。飼育当初から採取している場所にいった。川底の砂を掘って33個を採取。これらは、別のストック水槽に入れ、2〜3日に2,3個ずつ投入する。投入すればすぐに幼虫が食らいつくが、食べ終わるまでに2日ほどかかっている。
ホタルの幼虫たちは、上陸のために水温や気象の変化を敏感に感じながら過ごしていると思う。
劇的な変化の前の「大切な時間」なのである。
カワニナの殻を3個取り除き、水換えを済ませた後生きているカワニナを3個補充。
水温は日中11℃。ホタルの幼虫は石の影や砂の中に潜っているものもいる。
上陸用の陸地にハコベを植えて9日になるが、定着したようである。
ガラス越しに、線虫を発見。数匹が土壌表面近くにうごめいている。元来、土壌には様々な微生物が何万という単位で存在するものだが、これら線虫は、ゲンジボタルの蛹に悪影響を及ぼすことはないだろうか。少し心配である。
カワニナの殻を5個取り除き、新たに4個投入した。
確実に春に近づいていることを感じる陽気である。水槽のハコベも根を伸ばし始めた。
しかし、ゲンジボタルの幼虫の様子はまったく変化がない。
昨日気が付いてのだが、春−3月〜4月末ころまでは、水温の温度差(最低と最高)がひじょうに大きい時期なのである。自然界においてもそうである。夜や早朝などは水温も低くなる。しかし、日中の強い日差しは、まだ水面を覆うことのない若葉の間から小川に差し込み、水を温めるのである。葉が茂った後は、日差しも遮られ水温上昇も抑えられる。
幼虫が上陸する春の大きな特徴は、水温の高低差が一年で一番大きいことである。
このことは、幼虫が春を感じることに大きく関わっているかも知れない。
困ったことが起きた。ゲンジボタルの幼虫の上陸用水槽内に線虫?がかなり発生している。調べると、分類上では線虫ではないらしい。線虫は、1mm以下であるらしいが、水槽のものは、1cm〜大きいものでは3cmくらいある。小さいものは白っぽく透明で、大きいものは少し赤みを帯びている。土壌の中でうごめいていたり、ガラスの壁を這っていたりする。水中にはいない。これらは一体何だろう。おそらく、植えたハコベの根についてきたものが、繁殖したと思われる(別の容器の同じ用土には発生していない)。閉鎖的な環境で、土壌環境が偏っているのだろう。生態系が形成されていないのである。ピートモスによる強酸性と常に湿っている用土のために、バランスが悪いのであると思う。
ゲンジボタルの幼虫が蛹化に悪影響があるだろうか。いずれにせよ、このままでは良くないであろう。さあ、どうしよう。
ゲンジボタルの幼虫は、21時に観察すると、2匹が這っていた。1匹は、水面ぎりぎりの石の上を這っていた。水温は8℃なので、まだ、上陸はしないだろう。
2003年2月16日晴天が長続きしない。本日は冷たい雨である。春が近づいている証拠でもある。
昨日の線虫?であるが、どうやら土壌が居心地が悪いらしい。皆、水槽のガラス面に這い上がり、そのためにかえって乾燥して死んでしまっている。これでいいのであろうか・・・・・。
他にも、土壌が強酸性であることが気になっているので、本日は消石灰を土壌にまいた。コップで水と消石灰を混ぜて、土壌に注いでもおいた。もちろん、幼虫が上陸していたらできないことである。あらかじめ、ピートモスを中和しておくべきであったと後悔する。中和ならば、ピートモスを水道水で何回かすすぐだけでよかったのである。しかし、上陸までおよそ一ヶ月くらいあるだろうから、それまでに土壌ともなじむだろう。
羽化率を考えると出来るだけ生きた土壌に上陸させたい。せっかく上陸しても、カビや悪い菌によって死んでしまうことも多いからである。
今日は、線虫?は見られなかった。消石灰のお陰であろうか。
ゲンジボタルの幼虫は、カワニナを食べている。
気温の寒暖の差が大きくなってきた。天候も変わりやすい。予報では、今年も昨年同様に春が早いそうである。3月下旬には、上陸するかも知れない。
晴天と雨天が日替わりである。一雨毎に春がやってくる。ゲンジボタルの幼虫は60匹いるはずだが、21時の観察では、カワニナを食べているのは3匹。這い回っているものは1匹。残りはどうしたのか。皆、石の下でじっとしている。
2003年2月22日ゲンジボタルの幼虫に変化はない。3匹がカワニナを食べ、残りは見あたらない。カワニナの殻を7個取り除き、3個補充。水温は、15時で8℃。21時では6℃である。線虫?は数匹いたが、心配はなさそうである。
先週に消石灰をまいたが、用土が硬くならないように、表面近くを掘り起こす。その時、腐葉土を少々混ぜ、最後に霧吹きで水分を補給する。ハコベ等の雑草は定着したもよう。
今日はみぞれ混じりの寒い日である。21時の水温は3℃。それでも3匹の幼虫が1個のカワニナに食いついていた。自身の過去の観察や他者の記録からも、幼虫は、冬眠しないと結論づけてもいいだろう。ただ、この厳冬期において、カワニナが砂などに潜ってしまった場合は、まず捕食は困難になる。こうした時期は、一時的に休眠する幼虫もいるかもしれない。冬でもカワニナが活発に活動しているならば、休眠もしないかもしれない。水温の低さそのものは、ゲンジボタルの幼虫の成長とは関係がないと言っていいと思う。
2003年2月25日21時に観察すると、水温は7℃。幼虫はカワニナを食べ、数匹が水底を這っていた。昨日に比べるとかなり活発である。今日は朝からよく晴れたために、日中の水温は、おそらく12℃くらいになったのだろう。水の蒸発もあり、500ccほど足した。
もうすぐ3月であるが、ゲンジボタルの幼虫の上陸時期に関しては、1日の最低気温が、10℃以上が1つのポイントではないだろうか。
2月も終わりである。21時の水温は6℃である。まだまだホタルの幼虫の上陸はなさそうである。相変わらずゲンジボタル幼虫はカワニナを食べ、数匹が水底を這っていた。水面近くから、水上を伺っている様子もない。
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