ホタル百科事典/ホタルに関する調査研究レポート
人工飼育におけるゲンジボタル幼虫の成長
人工飼育におけるゲンジボタルの幼虫の成長について考えます。6月中旬〜7月上旬の成虫の発生期、卵期、幼虫期(1齢〜6齢)、蛹期と1年というサイクルの中でそれぞれの課程が割り振られています。
ここで注目すべきは、その幼虫期です。春の上陸の時期をどのように察知しているのか、そしてその時期までにどのように成長していくのかということです。
*下のグラフは、Javaアプレットで作成しております。正しく表示されない場合は、http://www.java.com/ja/download/ より、お使いのオペレーティングシステムに推奨されたバージョンの Java をインストールしてください。
ゲンジボタルの飼育条件
- 幼虫はすべて1匹のメスが産んだ卵から孵化した幼虫(兄弟姉妹)であるということ。
- 約560平方センチの飼育水槽に幼虫が約100匹であること。
- なくなれば補充するという方法で、餌のカワニナを30〜200個投入。
- 日照時間は水槽の設置場所の関係からほぼ一定。水温は季節とともに緩やかに低下。
飼育環境下におけるゲンジボタルの特徴
- カワニナが豊富にも関わらず食べようとしない幼虫がおり、孵化後から成長のばらつきがみられた。
- 餌のカワニナは、9月〜11月上旬頃までの間にかなりの数を食べており、その間の成長度合いも高い。
- 孵化後から11月下旬の体長を比べると、4ヶ月間の成長は実に15倍である。
- 初冬に一時的に餌の摂取量が減るが、12月中旬より再び多く摂取している。
- 早いものは12月下旬に終齢に達している。
- 終齢に達しても尚、カワニナの摂取量が多い。(翌1月下旬頃になると摂取量が減る)
- 1月末時点での、各齢の分布は上のグラフに示した通りである。1齢〜終齢まで分布している。
- 1月末になると、終齢以外の幼虫の脱皮成長がない。
- 幼虫全体の成長度合いのばらつきには、規則性はみられない。
自然環境下におけるゲンジボタルの特徴(生息地での調査)
- 日当たりの非常に悪く、水温の低い生息地でも、カワニナが大量に生息している場所では1月で終齢に達している。
(ただし、1年組か2年組かは不明)
- 年間を通じて水温の低い水系では、冬期おいても幼虫・カワニナとも活発に活動している。
- 夏に水温が高く、冬に水温の低い(夏冬で水温の差が大きい)水系においては、冬期は幼虫・カワニナとも不活発である。
(ただし、カワニナは種類の違いによるものかも知れない。)
考察
- 幼虫の成長度合いは、カワニナの摂取量(カワニナの生息数)に比例し、日照・日長時間や水温とは
関係がないように思われる。成長ホルモンの促進・抑制には日照・日長時間や水温は関与していないように思われる。
- カワニナの摂取量が多ければ、日照・日長時間や水温に関係なく、成長は極めて早い。しかし、上陸に関しては
気象条件が関与している。
- 孵化した時から、1年組と2年組が決定しているように思われる。
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