ホタル百科事典ホタルの飼育と観察日誌

東京にそだつホタル

ゲンジボタルの飼育と観察日誌(2004年)

★目 的

当初、飼育観察する予定であったが、事情により生息地での観察記録にとどめることとする。

2004年6月12日

 4月の上陸日と先日の降雨と気温の状況から、丘陵地では本日から発生すると推察できるため、本年1回目の生息地の現地調査を行う。
あきる野市の K.Point 及び青梅市の O.Point にて行った。
20時の気温23℃、曇天で無風。
K.Point では、約600mの範囲でいくつかの発生箇所があるが、昨年関した場所では3〜4日の発生であった。しかし、その200m下流ではおよそ50〜100匹程度の発生が見られた。岸辺においては羽化して地上に出てきたばかりと思われるオスが、飛ぶことはなく低い草の茂みに止まっていた。メスの発生は確認できなかった。
21時頃から見物人が増えたが、相変わらず懐中電灯を照らしたりする様子が見受けられる。また、行き止まりのため、車で来た方はUターンが必要だが、生息地の川にヘッドライトをむやみに向ける気遣いのなさも普通である。
ホタルが見られればそれだけでよい・・・我々の啓蒙活動はまだ全然足りないことを実感する。

2004年6月19日

 先週に引き続き現地の発生状況を調査する。
奥多摩の U.Point 及び青梅市の O.Point にて行った。
U.Point においては、20時まで待機したが、まだ発生は見られなかった。
O.Point では、20時30分に到着し目測でおよそ200匹程度の発生が見られた。メスの発生も多く確認できた。
 気温26℃。晴天で無風。約2mほど下の幅1.5mの小川から静かに沸き上がる光。まさに沸き上がるという表現でしか表せない。そして、2mほど上空で思い思いの方向にゆっくりと動き始める。そのまま天まで飛び立っていくかのように木立の上まで上がっていく・・・。
本日の調査では、法政大学の学生である白澤さんが同行した。いろいろと勉強になったと思う。すばらしい論文を期待したい。

2004年7月02日     ホタルの谷

 本日観察に出かけた場所は、奥多摩の渓谷であるが、19日には発生はしていなかったが、本日はおよそ200匹の発生があり、メスも数匹見られた。ほぼ最盛期を迎えていると思われる。
ここは、かつて西日本型のホタルが放流された場所で、成虫の発光は約3秒間隔であった。また、集団同期明滅も見られた。
 19時40分に1番ホタルが発光しはじめ、20時にはオスボタルが飛翔をはじめた。
21時には、ほとんど木の葉に止まり、発光を止めた。
 渓流の約200mの範囲を飛翔していたが、川面から、上空10m前後までに及び、さらには、川岸の広葉樹では、葉に止まっているホタル数十匹が同時に明滅するという光景が見られ、まさに、ホタルの谷といったところである。

2004年7月03日   黄金の乱舞 ヒメボタル

 本日は2カ所の発生状況の調査を行った。青梅市のI.Point では、例年七夕頃が最盛期であるが、本日はまだ発生初期で数も少なく、メスの発生は見られなかった。今度の週末頃が最盛期となるだろう。

 つづいて21時より奥多摩のヒメボタルの生息地に向かった。
沢の一番奥から、砂利の林道を約2kmほど登ると峠に到着するが、峠の下約50mからヒメボタルの発生が見られ、峠から徒歩でさらに数十メートルほど登ると、杉林の中に無数のヒメボタルが発生しており、黄金色の乱舞が見られた。数百メートルの範囲に飛翔しており、おそらく1000匹を越える数が生息していると思われる。例年では7月15日前後が最盛期であるが、今年は10日から2週間ほど早い発生である。
 ヒメボタルの飛翔する光景はゲンジボタルのそれとは違った神秘さがある。ほぼ1秒間隔の無数のフラッシュ発光が、暗闇の林内を移動する様は表現のしようがない。クリスマスイルミネーションに似ているが、もっと動的である。登山道を挟んで下から上へと上がっていくホタルもいる。理由はわからないが、拍手をして音を出すと敏感に反応して発光する様が観察できた。
 22時半頃には、発光が一段落し、ほとんど飛翔もみられなくなったのでいつまでもそこに留まっていたい気持ちを抑えて砂利道を下ったが、もう少しで舗装道路という時に前輪がパンクしてしまった。心は感動でパンクしたが、車までパンクするとは・・・
思い出深い1日となった。

 ヒメボタルの飛翔の撮影を試みたが、結果的に失敗に終わってしまった。F1.8のレンズにISO320のフィルムでは、まったく撮影できない。それほどの暗闇での暗闇での弱い発光なのである。F1.4のレンズにISO1600のフィルムが必要だと思う。

2004年7月10日   終息

 青梅のゲンジボタル発生地と奥多摩のヒメボタル発生地に行ったが、ほとんど飛翔発光は見られなかった。温暖化の影響で全国的に発生が早まっているとの話があるが、、都内では確かにヒメボタルにおいては、その傾向が認められる。ゲンジボタルにおいては、それほど早い状況ではないが、発生期間が短い生息地が見られる。これは、空梅雨と7月になってからの猛暑の影響が大きいと思われる。これらについては、ニュースレターにおいて検証したいと思う。

 今日は、ホタルこそ終息したが、星が美しく輝いていた。都内ではほとんど見ることの出来ない数と輝きであった。ホタルが星となって、天に輝いていたのだろうか。

 本年は、飼育観察を行う予定であったが、超マクロ撮影のための機材が揃わず、やむなく来年に持ち越すこととした。この観察日誌は、生息地に出向いた時の観察を記録したいと思う。


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