ホタル百科事典/ホタルに関する調査研究レポート

東京にそだつホタル

ゲンジボタル生息地の発生時期について

  2002年度は、例年よりもかなり早く桜が咲くなど各地で異常気象となり、ホタルの発生も全国的に早い傾向にありましたが、東京では、例年とほぼ同じ発生時期でした。これは、上陸期にあたる4月に降雨日が少なかったことが起因していると考えられます。また、幾つかの発生地ではその発生時期に大きな差が見られました。3カ所を調査してみますと、下のグラフのようになります。
この発生時期のずれは今年に限ったことではなく、毎年生じています。

ホタル発生状況  ホタル発生状況
グラフ.都内の生息地3カ所におけるホタル発生状況(2002年)

  ホタルの発生時期を全国的に見てみますと、桜前線のように九州からしだいに北上してきます。そして東京では、6月中旬頃が発生時期になります。しかし、同じ都内の中でも初期発生に半月以上もの差が生じています。
発生時期の差は、そのまま幼虫の上陸時期の差であると考えることが出来ます
通常、幼虫は条件の整った晩に全部が上陸することはなく、およそ一ヶ月間続きます。また、羽化するまで50日〜60日ほどかかりますが、これも地温や降水量などの条件で多少日数が異なることが解っています。このことが、その発生地での発生期間を決めていますが、上のグラフでは明確な地域的な差が認められます。つまり、発生地ごとに上陸を開始する日やその期間に大きな違いがあるということが考えられます。
上記3カ所における上陸時期の気象条件は、下表のようになっています。

ホタル上陸時期の気象条件

発生地A

発生地B

発生地C

区分

谷戸田

渓流

渓流

上陸開始日

4/12

5/10

5/17

気 温(上陸日)

12℃

11℃

11℃

水 温(上陸日)

13℃

10℃

10℃

降雨日

同一

同一

同一

日長時間

同一

同一

同一

日当たり時間(/日)

7時間

5時間

4時間

  幼虫が上陸時期を決定するポイントは、幼虫の成熟度合、水温、降雨、日長時間などが挙げられますが、まず水温では、Aは比較的高く、BとCはAに比べて低いという地域特性があります。ただし、各地域とも季節的変動はあっても上陸期という短い期間内では天候にあまり左右されず大きな変動はありません。降雨、日長時間については、各地域ともおよそ半径5km圏内でほぼ同一です。
次に、生息する川にあたる1日当たりの直射日光の時間(日当たり時間)を見てみますと、物理的環境特性から大きな違いが見られます。Aは谷戸田で開けていて日当たりがよく、Cでは、鬱蒼と茂っ林間の狭い谷のために日が当たる時間が短いという特性があります。
このことから、日当たり時間が幼虫の上陸開始と何らかの関係があると考えられます。
幼虫の成熟度を遅くしているのか、あるいは幼虫の上陸時期の判定そのものに関係しているのかは、今後の研究課題です。


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