ホタル百科事典/ホタルに関する調査研究レポート

東京にそだつホタル

ゲンジボタルの幼虫の成長について

  ゲンジボタルの幼虫の成長は、ヘイケボタルの幼虫とは違いかなりばらつきがあります。下のグラフは、ごく平均的な東京におけるゲンジボタルの幼虫の成長曲線を表したものですが、人工飼育下においては、飼育密度、カワニナの種類や量によって個体差がでます。また、自然界においても、生息している地域の水温や気温などの環境の違いによって地域差があります。(人工飼育による成長の報告は後述)

ホタルの幼虫飼育と気温と水温の変化

幼虫の成長曲線

  一般的に、孵化した幼虫は9月から11月にかけて餌となるカワニナ多く食べ、成長も盛んですが、この時期にカワニナを十分に捕食できないでいるものは成長が遅れます。翌年になっても体長が1cmに満たず、終齢を迎えることができないものはさらに1年水中ですごすことになります。
  幼虫は基本的に自分の体に合ったサイズのカワニナを食べます。捕食量の多い9月から11月は、一匹の幼虫が3mmから6mm程度のカワニナを食べます。自然界においては、カワニナの産卵が4月ないしは5月頃から始まるので、ちょうど9月から11月には適度なサイズのものが豊富に生息している状況にあります。しかしながら幼虫は3〜4匹の集団でサイズの少し大きいカワニナを捕食することもしばしばありますが、1対1の場合に比べて実際の消化吸収量は少なくなります。飼育下においても、かなり大きいサイズのものの殻を砕いて与えると、数10匹の幼虫が群がって捕食する光景が見られますが、この状況ばかりでは幼虫の成長速度も遅く、ばらつきも拡大していきます。
  また、10℃を下回る低水温の場合では幼虫は礫の底などでじっとしていることが多く、捕食量も極端に減少し、成長も遅くなります。
  では9月から11月の間にどれだけのカワニナが必要なのでしょうか。幼虫が理想的な成長を遂げるには1匹の幼虫が適当なサイズのカワニナを最低10個以上捕食する必要があります。単純に100匹の幼虫がいるならば食べられるカワニナだけで1000個必要ですが、幼虫がカワニナに出会う確率を考えれば、実際はその数倍の量が必要になります。また、1匹の幼虫が1個のカワニナを3日かかって食べ終わるとするならば、毎日最低100個のカワニナが同居していなければならないという計算になります。
  そして更に自然界では、カワニナは殻の直径が1mm大きくなるごとにおよそ60%ずつ死んでいくという報告もあります。
つまり、100匹の幼虫が成虫になるためには、1万個以上のカワニナが必要なのです。


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