ホタル百科事典ホタルの飼育と観察日誌

東京にそだつホタル

ヘイケボタルの飼育と観察日誌(1976年)

1976年7月11日

一昨日のヘイケボタルの成虫がどこにもいない。よく探すと飼育水槽の端のクモの巣にかかっていた。大変だ。すぐに取ってあげたが、かなり衰弱している。

1976年7月13日

15時、飼育水槽を見た。するとシャーレの中のヘイケボタルの蛹がない。昨日、羽が黒くなっていたのでもしかすると・・・。しかし、11日で羽化するわけがない。よく見ると蛹の抜け殻が残っていた。飼育水槽内をくまなく探すと、水面の角の方に浮いていた。まだ元気だ。

ホタルの前蛹〜羽化まで

7/3

まゆの中で幼虫が丸くなっている。体にしわがなく、全体的に透き通っている。

7/7

蛹化。黄色がかった白い蛹になる。腹部の2点(幼虫同様)が発光

7/11

複眼が黒く色づく。成虫と同様の部分が発光。明滅はしない。

7/12

羽が黒く色づく。

7/13

羽化。まだ柔らかい。

1976年7月24日

夜、飼育水槽を見る。でもヘイケボタルは光っていない。飼育水槽の蓋を取ると、光った。飼育水槽の壁を叩くとまた光った。今日までに合計4匹発生している。

ヘイケボタルの蛹  ヘイケボタルの蛹

1976年8月12日

午前8時、飼育水槽を見る。すると、コケに産卵していた。0.5mmくらいで色は黄色である。

1976年8月16日

ヘイケボタルの成虫は昼間は草の葉の裏や間でじっとしている。また、コケのところにもいる。霧吹きで水をかけると動き回り、口からカブトムシと同じような「刷毛」をだして水を吸い始める。吸い終わると、葉の裏に隠れて頭を縮めてじっとする。夜は20時頃から光り始めて、あちこち動き回る。飼育水槽が狭いので、あまり飛び回らない。

1976年8月19日

羽化したヘイケボタルの成虫は今日までに15匹。すでにミズゴケに産卵している。

1976年8月20日

昨日の夜に水田で採集したヘイケボタルが卵を産んだ。浅い飼育水槽に植木鉢を逆さまに置いて、その上に卵のついたコケを置いた。そして水を入れた。

1976年8月25日

8月12日に見つけた卵から15匹のヘイケボタルの幼虫が孵化した。ちょうど14日目になる。20×13×13cmの飼育水槽に砂を敷いて水を8cmほど入れ、幼虫を放した。エアーポンプで空気を送っている。

ヘイケボタルの卵

1976年8月26日

約1cmのヒメタニシを砕いて、孵化したヘイケボタルの幼虫に与えた。

1976年8月27日  実験

試験管に水を入れ、ヘイケボタルの卵を水中に数個入れたところ、20日目に水中で孵化した。

1976年9月6日  卵の発光

午後10時に卵を見る。息を吹きかけるとピカーと光った。これで、ヘイケボタルの卵、幼虫、蛹、成虫の光をすべて観察できた。

1976年9月7日

今日、ヘイケボタルの成虫が2匹羽化した。

1976年9月18日

今日3匹、ヘイケボタルの成虫が羽化した。合計24匹
また、今日までに孵化したホタルの幼虫は、455匹。

1976年10月01日  実験

中性石鹸、合成洗剤を入れたそれぞれの試験管に幼虫をいれたところ、どちらも死亡。

1976年11月21日  晩秋にヘイケボタルの成虫羽化

午前8時に飼育水槽を見ると、なんとヘイケボタルの成虫が羽化して草の上に止まっているのを発見。水槽内に温度12度、湿度87%、土中温度14度。体長11mmのメスである。

飼育水槽とホタルの成虫の写真
写真.上陸用水槽と12月のヘイケボタル

1976年12月12日

午前9時に飼育水槽を見る。相変わらずツユクサやハコベが茂げっている。ヘイケボタルを探すと仰向けになっていた。シャ−レに入れて部屋の中へ連れて行くと、動き出した。これまで最長24日生き続けたという報告があるが、このヘイケボタルは現在22日目である。

1976年12月16日

羽化後26日目で死亡。

生態系とはかけ離れたホタル飼育

「冬に光るヘイケボタル」について

1976年11月21日に成虫が羽化したが、これは、自然界ではあり得ない人工飼育下での特別なことです。ヘイケボタルの幼虫は基本的に非常に成長が速く、個体差もあまりありません。食欲も旺盛で、人工飼育では12月には終齢を迎えることも珍しくありません。しかしながら、上陸はかなり個体差が認められます。上陸は気温、水温の上昇と日照時間や天候が関係していますが、(詳細は生態の項を参照)ヘイケボタルの場合は、ゲンジボタルに比べてそれほど厳密ではありません。3月頃から8月頃まで長期間にわたって行われます。(もちろん成虫の発生期間も長期間です。)この場合は、1975年に孵化した幼虫ですが、翌年の夏になっても上陸せずに、11月になってから上陸したのです。終齢を迎え時期が来ると早々に上陸するものもいれば、何度もトライしては諦めて水中に戻るといった光景を観察したことがあります。
この上陸期間(あるいは発生期間)は、人工飼育という不自然な気象状況によってさらに長期間になる可能性があります。(志賀高原のホタル発生地は、日本で一番高地の発生地であるために平均気温は低いのですが、温泉が小川に流れ込んでおり、年間を通じて水温が高いという特別な環境にあり、ゲンジボタルにおいても5月から9月頃まで発生すると言われています。)
また、蛹化と羽化までの日数はばらつきはあるものの、とても短い場合では
上陸から蛹化まで5日、羽化まで7日、地上にでるまで3日、合計15日という観察をしたことがあります。(1976.7古河)11月上旬に上陸しても中旬すぎには、羽化して地上へ出てくるのです。
(人工飼育下におけるヘイケボタルの成長はとても速く、東京都多摩動物公園では、卵から成虫になるまで最短4ヶ月であると報告しています。)
自然界においても長期間発生するヘイケボタルは、特別な気象環境下(例えば志賀高原のような環境)では、さらに発生期間が長くなり、11月でも羽化すると言えます。更に、成虫の寿命が通常の4倍の26日であったことについては、低気温が関係しています。気温が低い環境下では、代謝量が少なくなり、長生きするのです。低すぎれば死んでしまいます。12度くらいが、限界と思われます。


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