オオイチモンジ(Limenitis populi jezoensis)は、前翅の開張幅がオスで 66mm内外、メスで 80mm内外もある大型で、翅表は黒地に白色の斑紋が帯状に並び、後翅の外縁付近には橙色の帯がある地味ながらも美しいのタテハチョウ科の仲間である。
幼虫の食樹となるヤナギ科であるドロノキ(ドロヤナギ)やヤマナラシが多い沢沿いの林縁、湖沼の周辺林、沢沿いの林道に生息するが、分布は北海道と本州(福島県桧枝岐村から栃木県奥日光、中部山岳地帯の標高1000m~1600m)である。
近年の温暖化が影響しているのか、生息域の標高が上昇し、生息域の面積が縮小傾向にあると同時に、河川改修によるドロノキの伐採や、針葉樹の植林によるヤマナラシの減少等の理由により絶滅が危惧されており、環境省RDBでは、絶滅危惧Ⅱ類(VU)として記載、比較的生息数の多い北アルプスがある長野県、岐阜県、富山県のRDBでは、準絶滅危惧種として記載している。尚、埼玉県、群馬県、栃木県では絶滅したと言われている。
群馬県、長野県、山梨県では県指定の天然記念物であり、また長野県においては、種の保存法および関連した都道府県条例での指定種となっており、これらの県での採集はできない。しかしながら、オオイチモンジはチョウ・マニアの垂涎の的であり、過去に自然公園保護法違反、文化財保護条例違反、県希少野生動植物保護条例違反(無届けの捕獲)等で書類送検された採集者が何人もいる。
オオイチモンジの撮影は、昨年、岐阜県では大空を滑空する姿を見ただけで終わり、その後、上高地にて挑戦しているが、悪天候により叶わなかった。今回、一年待っての再挑戦であり、再び上高地に向かった。
7月三連休(私的には四連休)初日は雨。入念に天気予報をチェックし、2日目の19日に決行。前夜20時半に自宅を出て、沢渡の駐車場で車中泊。釜トンネルのゲートは5時に開くが、ゲート前にタクシーの列が伸びると10分前に開けてくれるので、4時半に予約したタクシーに乗り、沢渡を出発。案の定、10分前にゲートが開き、バスターミナルに5時着。ポイントを目指し、歩き始める。
6時半にポイントに到着。この日、関東では梅雨明け宣言が出されたが、北アルプスの天候は不安定な様子で、穂高連峰は雲の中。近くの山からは、前日に降った雨が雲となって上がって行く。東の空に若干見える晴れ間が広がる事を期待し、陽が差してくるのを願いながら、ひたすら待つ。 2時間が経過すると、ようやく夏の日差しが照りつけるようになってきた。すると、どこからともなく1頭のオオイチモンジが飛来し、目前で吸蜜を始めた。写真には収めることができたものの、残念ながら、かなり翅が傷んでいる。その後、数頭のオオイチモンジを目撃したが、どれも翅が傷んでいた。今年は、昆虫類の発生が全体的に早い傾向にあったが、オオイチモンジもそうだったのだろう。先週、富山~奥飛騨を訪れていた時が最良の日だったかも知れない。いつもながら、タイミングに悩まされる。
10時半を過ぎると、雨が降り出してきたので、上高地を撤退。沢渡に戻ってから、白骨温泉経由で乗鞍高原へ向かったが、雨が止まない。予定では夕方まで、或いは場合によっては車中泊して翌日もと考えていたが、仕方なく帰路に就いた。一番避けたい時間帯の中央道。20kmの渋滞で帰宅は21時をまわった。
オオイチモンジは、初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で128種類目となる。来年は、翅の傷んでいない美麗な個体の撮影を実現するべく、優先順位の高い種として計画したい。
オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800 +1 2/3EV(撮影地:長野県松本市/上高地 2015.7.19 9:02)
オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 400 +1 2/3EV(撮影地:長野県松本市/上高地 2015.7.19 9:04)
オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 400 +1 2/3EV(撮影地:長野県松本市/上高地 2015.7.19 9:05)
オオイチモンジの撮影ポイントにおいて、一際美しさを放っていたのは、ブルー・ ベルベットのような普通種のルリタテハであった。
ルリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500 +1 1/3EV(撮影地:長野県松本市/上高地 2015.7.19)
こんばんは、
上高地にいらしたのですね。オオイチモンジの初撮影、苦労なさりながらようやくお撮りになれて良かったですね。
翅裏と表の模様、色の違い、印象的です。
翅を広げるとかなり大きくて見事ですね。
お写真のそばの花からその雰囲気がわかるような気がします。
ルリタテハの青の紋様、絣のような感じで美しいです。
連休中の長距離ドライブお疲れ様でした。
granma様、こんばんは。
1年待って上高地で再挑戦し、ようやく念願のオオイチモンジを撮影できたのですが、
残念ながら、翅がボロボロのオオイチモンジばかりでした。
上高地は採集が禁止されていて、広い範囲で見ることができ、河童橋近くでも飛んでいます。
本来は、もっと綺麗なので、来年にまた再挑戦したいと思います。
ルリタテハは、目黒の自然教育園や砧公園でも見ることができると思います。
猛暑、酷暑の夏が始まりました。
どうぞ、お体にお気を付けください。
こんにちは。初撮影ができて良かったですね。翅が痛んでいたのは残念ですが、成果があって何よりでした。
多摩NTの住人様、こんにちは。コメントありがとうございます。
他の種類も撮る事ができましたので、無駄にはなりませんでしたが、
オオイチモンジも綺麗なところを撮りたかったです。
翅がボロボロでない羽化したばかりの綺麗な時期と天候、そして私の休日が合致するのは
宝くじに当たるようなものかもしれません。
また来年、挑戦します。
遠征撮影行、お疲れさまでした。
最初から完品個体が撮れるに越したことはないですが、、、
本当にタイミングって本当に難しいですね。
やはり高山蝶も発生が早いのでしょうか?
河童橋の辺りでも見ることができるのですね!人が多そうですが、、、
観察するなら奥地まで行った方がよいのですか?
蝶撮を始める前ですが、徳沢まで歩いたことがあります。
他の蝶も撮影されたようで、そちらの紹介も楽しみにしております!
ともきりんさん、こんばんは。
例年だと一番良い頃だと思ったのですが、すでに時遅しといった感じでした。
台風も来ましたし、運が悪かったと思う他ありません。
上高地は、河童橋から徳沢の先まで植樹のある付近で見ることができますが、
年々、梓川の上流の方へ生息場所(活動範囲?)が移動しているようです。
環境省のレンジャーがパトロールで巡回しているので、
採集者からは守られているようですが、環境の変化まではどうしようもありません。
来年こそは、極美麗なオオイチモンジを撮りたいと思います。
クモマベニヒカゲ等は、今年の予定にありませんが、時期が早いかどうか、行ってみなければ分からないのが厄介ですね。
今週末も、台風12号の動きが気になります。
キリシマとアイノの予定なのですが・・・