フジミドリシジミ(Sibataniozephyrus fujisanus)は、シジミチョウ科フジミドリシジミ属(Sibataniozephyrus属)に分類されるゼフィルスで、和名の「フジ」は、100年前ほど前に富士山の中腹で初めて発見されたことに由来する。ブナおよびイヌブナを食樹とし、山間部のブナを含む広葉樹林に生息しているが、撮影した岐阜県のRDBには準絶滅危惧種として記載されている。
フジミドリシジミは、過去に2度撮影しており、「フジミドリシジミ」及び「フジミドリシジミ(5月)」として掲載しているが、いずれも東京都八王子市にて撮影したものである。
フジミドリシジミの活動時間は早朝と夕方で、食樹のブナおよびイヌブナの樹冠付近にてテリトリーを見張る行動をするため、八王子市での撮影は、食樹であるブナの樹冠を見下ろすという特殊な場所にて、早朝の活動時間に行ったものであるが、今回は、場所も状況もまったく違う。
7時。ブナの樹冠に朝日が当たり始めた。訪れたブナの森は大木ばかりで、樹冠は10mも上。見上げたが、飛びまわっているフジミドリシジミは1頭もいない。他のゼフィルスでもそうであるが、フジミドリシジミは、ある条件の下では早朝に下草に降りていることがあるので、林道沿いを見て回る。すると、ブナの森を流れる小さな沢と林道との出会いの周辺で、10頭を越えるフジミドリシジミのオスが下草上で見られた。話には聞いていたが、これほど狭い範囲の下草に多くのフジミドリシジミが見られるとは驚きである。
下草に朝日が当たり始めた頃、葉に付いた夜露を舐め、翅を開いて体を温めるという行動で、テリトリーを見張るというものではない。初夏の強い朝日が当たり、フジミドリシジミの翅がキラキラと輝く。実験的に手で陰を作ってみたが、フジミドリシジミはすぐに飛んで日向へ移動する。しばらくすると、弱々しく羽ばたきながらブナの梢へと飛び立っていった。
フジミドリシジミは、どのような条件の下で下草に降りるのか、また時間的にいつ降りてくるのかは分からない。前日は晴れで猛暑。夜は快晴無風であったが、朝は放射冷却のない比較的穏やかな朝で、朝露がびっしり付くような状況ではなかった。ただし、沢の周囲には冷気で朝露が付いていたように思う。おそらく、フジミドリシジミは毎日のように下草に降りていることはなく、何らかの気象条件が合致しなければ、今回遭遇したような光景は見られないと思われる。
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640 -1/3EV(撮影地:岐阜県高山市 2015.7.12 7:16)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:岐阜県高山市 2015.7.12 7:17)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 800 +1EV(撮影地:岐阜県高山市 2015.7.12 7:29)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 2000 +1EV(撮影地:岐阜県高山市 2015.7.12 7:31)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 2000 +1EV(撮影地:岐阜県高山市 2015.7.12 7:31)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1000 +1EV(撮影地:岐阜県高山市 2015.7.12 7:37)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:岐阜県高山市 2015.7.12 7:25)
ワタシも集団で下草に降りることがあると聞きました。
本当なのですね!
10数頭とは、他のゼフではなかなか考えられないことですね。
もし、蝶同士が近くにいるのなら広角で撮影してみたいです。
どの位の広さの所に降りてきていたのですか?
あ~ウラヤマシイ…^^
いろいろな条件が重ならないとなのでしょうけれども…
是非ともこんな光景見てみたいです。
ともきりんさん、こんばんは。
4畳半くらいの範囲の下草のあちこちに止まっていましたよ。
ブナの森はかなり広いのですが、沢と林道が交差する場所でしか見られませんでした。
特別な条件があるのだと思います。
フジミドリシジミは、本命ではなかったのですが、結局、この日はフジミドリシジミしか
撮影できませんでした。
駐車場から往復5時間の道のりです。
良い所なのですが、網を持った輩も多いので、気分よく帰っては来れません。