富山県黒部市在住の 中 毅士 氏の研究が実を結んだ。一昨年、自然環境下において「ミミズを食べているゲンジボタルの幼虫」を発見し、その後、昨年から孵化した幼虫をミミズだけで人工飼育する実験を行い、6月3日に見事に成虫になったのである。これまでゲンジボタルの幼虫は「カワニナ」しか食べない、成長しないという定説を覆した。
また、羽化した成虫は、11.57mmとカワニナで成長したゲンジボタルに比べて小さいが、発光も通常で何ら変わっているところもない。
ゲンジボタルの幼虫の代用食として持ち込まれた外来種の「コモチカワツボ」が生態系を壊すということが問題になっているが、これはこれとして大きな問題であり、駆除は必要だが、ある発表に「コモチカワツボにはほとんどミネラル(特にマグネシウムとセレン、ゲルマニウム)がなく、幼虫の成長を阻害するばかりか、発光生物としての役割を担う気管が未発達となり、光による求愛行動は不可能なる」というものがあった。ミミズだけで成虫になっても、体長こそ小さいが、光による求愛行動は通常に行うことができるのである。
この「ゲンジボタルがミミズで成虫に」という研究結果は、人工養殖の代用食という低俗な実験ではない。ゲンジボタルの生態学上の重大な発見と記録である。私なりにきちんとまとめて報告したいと思う。
さる6月27日、28日。上記の「ミミズを食べているゲンジボタルの幼虫」が観察された富山県黒部市を訪れ「ホタルの生息環境の視察」を行った。中 毅士 氏が観察した生息地をはじめ、他の幾つかの生息地を視察した結果を簡単にまとめると
- 水田脇の細い側溝(ただし、水田から1~1.5mほど下で、かなり古く側面にはコケ)にゲンジボタルが生息している。
- 人が立っていられないほど急な流れ(幅1~2m)でも、数百のゲンジボタルが乱舞する。
- ダムの上流域の溜まる土砂を一気に流すことで、下流域の環境が悪化し、ホタルが激減する。
- ヘイケボタルが、急な流れの河川(幅1~2m)の一部に生息している。
特に、ヘイケボタルは、流れのない水田や湿地に生息していることが定説であったが、黒部市においては急な流れの河川の一部にも生息しており、これも定説を覆す事実である。
ゲンジボタルがカワニナ以外で成虫に(北日本新聞 朝刊 2015.6.26)
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さて、富山県を訪れたのは、「ホタルの生息環境の視察」の他に、未見未撮影のチョウの探索も大きな目的であった。
27日(土)の午前7時に雨模様の自宅を出発し、富山県黒部市へ。途中、妙高高原の辺りで青空が覗いたが、日本海に出た途端に曇り、現地では到着直後から雨で、次第に風も強まり、まるで台風のような天候。生息を確認している食樹において一瞬だけチョウを見たが、種類の特定までは至らず断念。
魚津のビジネスホテルに宿泊し、翌28日(日)に賭けるが、またしても雨。関東から西は初夏の日差しが降り注いだようだが、北陸は「雨」「暗い」「寒い」という最悪の状況。目当てのチョウはまったく確認できなかった。天候ばかりはどうしようもないが、悔しくて仕方がない。
28日(日)の14時に富山を発ち、自宅には戻らず、予め29日(月)は有給休暇を取っていたので、北陸自動車道の新潟経由で福島県会津若松市へ向かった。先週に見つけてしまった猪苗代湖畔のカシワ林に行くためである。
北陸自動車道は、雨、雨、雨。現地には18時に到着したが、雨。朝には晴れるという予報信じて就寝したが、眼が覚めると雨!5月には、和歌山~長野県白馬村(1,373km)、伊勢神宮(900km)、6月には、大阪府能勢町(1,100km)、会津~仙台(900km)と遠征し、今回は、富山県黒部市、福島県会津若松市を廻る1,142kmの遠征。富山では、目的のチョウを見ることさえ叶わなかったので、このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。苛立ちを抑えながら待っていると、6時半に、ようやく雨が止んだので、準備を整えカシワ林に直行した・・・
最後になりましたが、黒部市においては、中 毅士 様にたいへんお世話になりました。心から厚く御礼申し上げます。
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