ウラジロミドリシジミ(Favonius saphirinus)は、シジミチョウ科オオミドリシジミ属(Favonius属)のゼフィルスで、東日本ではカシワを主とし西日本ではナラガシワを食樹としている。オスの翅表は光沢ある緑色で、見る方向によっては学名にあるように濃青色(サファイア・ブルー)を呈する。メスの翅表は暗い褐色。翅裏の地色は、雌雄ともに銀白色で数本の暗色条があるが、オスでは弱いか消失する個体がある。翅裏の銀白色と翅形が丸みを帯びてることが、他のミドリシジミ類と異なり、ウラジロミドリシジミの特徴となっている。
環境省RDBに記載はないが、開発等によるカシワ林の消失や乱獲により各地で絶滅が危惧されており、多くの府県で絶滅危惧Ⅰ類等に選定している。撮影した長野県では、準絶滅危惧種に選定している。
ウラジロミドリシジミは、同じカシワを食樹とする同属のハヤシミドリシジミ等に比べ、生息場所が局所的と言われる。東京都内では、ハヤシミドリシジミは生息しているがウラジロミドリシジミは生息していない。そのため、生息地域の1つである長野県白馬村を選んだ。
7月12日、15時に白馬村に到着し、まずはロケハン。遠方において、単独自力でポイントを探すのは容易なことではない。車であちこち走り回ってカシワの木を探す。あることにはあるが、しかし、まとまったカシワ林はない。2時間ほど探して、水田脇に小さなカシワの木が5本ある場所を見てみた。すると、ゼフィルスが飛んでいる。葉に止まったので写真に撮ってみるとハヤシミドリシジミのオスであった。
翌朝、ポイントのカシワの木を叩いてみると、ゼフィルスが飛びだした。そのうち1頭が、近くの下草に降りたので、1枚撮影。角度を変えようと近づくと、飛ばれて見失う。その後は1頭も見ることができず、撮影した個体は、ハヤシミドリシジミと思い込んで、諦めて帰路に就いた。
帰宅後、写真を現像しながら確認すると、何とウラジロミドリシジミのメスと判明。もっと丁寧に撮影すれば良かった、もっと周囲を丹念に探すべきであったと後悔。そこで、今回の再訪となる。
19日の夕方に同じポイントに行ってみると、4頭のゼフィルスがカシワの木の周りを飛んでいたので時期的に間に会ったと、まずは一安心。ポイントで観察していると、ハヤシミドリシジミに交じってカシワの木の周りを高速で飛ぶ小さなゼフィルスが目に入った。ハヤシミドリシジミのオス同士が近づくと、すぐに卍飛翔が始まるが、この小さなゼフィルスは、ハヤシミドリシジミに近づいても、卍飛翔にはならない。
翌早朝、カシワの木にいた6頭のゼフィルス1頭1頭を丁寧に観察すると、1頭がウラジロミドリシジミ(メス)であり撮影することができた。また、昨日の小さなゼフィルスを探すと、ススキの葉に止まっていた。ハヤシミドリシジミより一回り小さい。かなり翅が擦れていて、種類を特定するのが困難な状況のため、「蝶鳥ウォッチング」のyoda氏に同定を依頼したところ、「ウラジロミドリシジミ」と判明した。
今回は、翅裏だけの撮影で終わってしまったので、来年は、学名にあるようにサファイア・ブルーに輝くオスの翅表を撮影するべく、白馬村に通い詰めることになるだろう。
ウラジロミドリシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で117種類目、全25種類のゼフィルスでは21種類目となる。
ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 2000 -1EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.13 4:49)
ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.20 4:57)
ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.20 4:57)
ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 640(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.20 5:23)
次回は新鮮な♂雄の開翅に出会えるといいですね。
今回同定に少し手こずりましたが、有名なY先生も、
ここまで後翅の外中央帯が直線状になる♂雄は珍しいのだとか。
YODA様、こんばんは。
今回は、種類の同定に関し、いろいろとご教示いただきましてありがとうございました。
この個体は、とても小さく、特別な個体変異なのかも知れませんね。
来年は、ぜひ綺麗なオスの開翅を撮りたいと思います。