フジミドリシジミ(Sibataniozephyrus fujisanus)は、シジミチョウ科ミドリシジミ族フジミドリシジミ属(Sibataniozephyrus属)に分類される日本特産のチョウで、通称ゼフィルスと呼ばれる一群の一種である。今から100年前ほど前に富士山の中腹ではじめて発見され、和名に「フジ」と付いた。前翅長は、16~18mm。ミドリシジミの仲間としては小型で、オスの翅の表面が金属光沢を持つ青色なのが特徴である。
山地性で、幼虫の食樹であるブナおよびイヌブナが混じる広葉樹林に生息しているが、分布は局所的で個体数も多くはない。環境省RDBに記載はないが、西日本の多くの県で、準絶滅危惧種として記載している。
6月、7月は、ホタルの季節でもあるが、ゼフィルスの季節でもある。ゼフィルスは、日本国内に25種類生息しており、一昨年までに13種類、昨年は新たに5種類を撮影して合計18種類まで撮り揃えることができた。残り7種類。今年は、未撮影を少なくとも3種類、開翅写真の撮り直しを3種類予定している。
さて、本年最初は、未撮影のフジミドリシジミに挑戦である。昨年は、発生時期に予定を合わせることができなかったため、本年は、万全を期して臨んだ。フジミドリシジミは、生息地によって発生時期が異なり、早い所では、5月中旬。遅い地域では8月上旬で、しかも生息地内でも、毎年、同じ場所で発生しないと言われている。また、早朝に下草の上で開翅していたり、地面で吸水していることもあるが、活動時間のほとんどは、ブナの大木の高い梢付近を飛び回っており、撮影の難易度は高い。翅裏の撮影も重要だが、フジミドリシジミの美しい青色の翅表を撮ることが目的だから、撮影場所の選定も重要になる。
そこで、東京都内の生息地の1つを訪れた。土曜日は仕事で出勤だったため、6月1日の日曜日、午前3時半に自宅を出発。麓の駐車場に車を止めて、4時半から登山開始。麓の池では、せり出した木の枝にモリアオガエルの卵塊が2つ産み付けられている。今年は、少し早いようだ。よし!フジミドリシジミにも会える!そう念じながら歩き始めた。かなりの急勾配の連続で、息が切れ、汗が噴き出るが、谷に陽が当たる前に到着したいので休まずに先を急ぐ。
目的の場所へ5時半に到着。一息入れてから、イヌブナの樹冠を眺めていると、1頭のシジミチョウがチラチラと飛び始めた。翅表が青い!フジミドリシジミに違いない。早速、カメラをセットし、後を目で追いかける。
止まった場所へ600mmレンズを向けると、紛れもなくフジミドリシジミのオスである。全部で3頭のオスを確認できた。時期も良かったようである。翅が擦れていない美しい個体ばかりである。日向で開翅もするが、すぐに飛び立ってしまい、なかなか綺麗に撮ることができない。テリトリーを見張る占有行動ではなく、日向ぼっこなのだろう。
被写体が小さく、また被写体まで距離がある場合は、トキナー300mmに2倍のテレコンバージョンレンズを付けた600mmの超望遠が重宝している。単焦点レンズだから、テレコンを付けても画質的には不満はない。ただし、被写体をファインダー内に捉えてピントを合わせるのに時間がかかる。今回も、フジミドリシジミの4枚の翅表が青色に輝く角度で止まってくれた時があったにも関わらず、ピント合わせが間に合わず、チャンスを逃がしたのが悔やまれる。
日差しが強くなってきた午前7時頃には、全く飛ぶ姿が見えなくなった。飛んでくれないと、居場所すら分からない。フジミドリシジミは、早朝と午後~夕方にかけて活動すると言われているから、早朝の活動時間は終了したようだ。しかしながら、すぐ近くの梢に1頭のメスのフジミドリシジミが止まっているのに気が付いた。翅は開かなかったが、イヌブナの葉の表面にストロー状の口器を伸ばして、何かを吸っている様子を観察できた。
フジミドリシジミ目当ての撮影者が何人かは来るかと思ったが、結局、最後まで私一人。翌日が休みであれば、このまま夕方まで頑張るのだが、後ろ髪を引かれながら午前9時に撤収。帰路の下り坂もしんどい。昨日今日と、最高気温は30℃。車に辿り着く頃には疲労困憊。まだ午前10時ではあったが、一応フジミドリシジミを撮ることができたので、予定通りに自宅へと向かった。来年は、見る角度によって変化するフジミドリシジミの翅表の色を最大限の美しさで撮れるよう粘りたいと思う。
フジミドリシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で113種類目、全25種類のゼフィルスでは19種類目となる。
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 6400(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 5:55)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/1600秒 ISO 6400(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 5:56)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/320秒 ISO 6400(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 6:37)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/320秒 ISO 6400(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 6:37)
フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/320秒 ISO 6400(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 6:37)
フジミドリシジミ(開翅)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/4000秒 ISO 6400(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 6:06)
フジミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/400秒 ISO 6400 -1/3EV(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 6:53)
フジミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F10 1/1250秒 ISO 6400 -1/3EV(撮影地:東京都八王子市 2014.6.1 8:45)
こんばんは。
フジミドリシジミの初見初撮影がお出来になって
良かったですね。
タイトルを見た時、緑色のシジミかと思ったのですが
綺麗な青い色のシジミなのですね。
小さなシジミを600㎜の超望遠で撮るのは
とても大変でしょうね。
granma様、こんばんは。コメントありがとうございます。
フジミドリシジミは、一年前から計画しておりましたので、出会うことができて嬉しく思っております。
ミドリシジミの仲間は、金緑色や青緑色に輝く種類が多いのですが、
このフジミドリシジミは、明るい青色が特徴で、綺麗なチョウです。
600㎜の望遠レンズで撮っていると、人は野鳥と思うのでしょうね。
「何という鳥ですか?」と聞かれるのですが、
「チョウチョです。」と言うと、不思議な顔をされます。
この週末は、大雨で予定が狂ってしまいました。
土日ともに雨は、勘弁してほしいものです。