ヤマトセンブリ(Sialis yamatoensis)は、アミメカゲロウ目センブリ科のたいへん地味で絵にならない昆虫(初撮影)。同じアミメカゲロウ目には、お馴染みのウスバカゲロウ(アリジゴクの成虫)やクサカゲロウが属しており、撮影済みの絶滅危惧種キバネツノトンボもいるが、それらに比べても地味な昆虫で、撮影対象外にしたいところだが、ヤマトセンブリは、一時期絶滅したと思われており、その後1994年4月に東京都あきる野市の谷戸において 37年ぶりに見つかったという昆虫だ。
ヤマトセンブリの再発見当初は、あきる野市の湿地が現存する唯一の生息地と言われており、現在においても神奈川県藤沢市や栃木県宇都宮市などで確認されているだけである。東京都RDBでは、絶滅危惧ⅠA類として記載され、環境省RDBにおいては「情報不足」(絶滅危惧のカテゴリーに入る可能性が高いが情報不足で決定できない)とされている非常に珍しい昆虫なのである。
ヤマトセンブリは、前翅長がオスで8~11mm、メスは10~14mmで、体色は黒褐色。翅は透明で茶色をおび、前翅の基部は色がやや濃くなる。近縁種で比較的多く見られるクロセンブリ(Sialis melania tohokuensis)、ネグロセンブリ(Sialis japonica)、フタオセンブリ(Sialis bifida)は、前翅の基部が黒褐色であることで本種と区別できる。
ヤマトセンブリの生活史は、ヘイケボタルのそれに似ている。幼虫は水生で、生きた餌を捕えて食べる肉食性。1年~2年かかって成長し(メスは2年要する)、3月頃に終齢幼虫が降雨時に岸辺に上陸して蛹になり、4月頃に羽化した成虫が、湿地周囲で日中活発に飛び交い、花の花粉などを食べるという。成虫は、交尾を終えると岸辺の抽水植物の茎、樹木の枝・葉やコンクリートの壁面などに卵塊を産みつける。孵化した1齢幼虫は落下して水中生活を始める。ヤマトセンブリが生存するためには水辺環境だけではなく、ヘイケボタル同様に周辺環境も良好でなければならないのである。地味だとか、撮影に向き不向きという問題ではない。このヤマトセンブリも、生態系豊かな里山環境を象徴する昆虫なのである。
ヤマトセンブリを撮影した湿地の水たまりにアカハライモリがいたので、同時に撮影。アカハライモリも谷戸の代表的な生き物であるが、生息地も生息数も少なくなってきており、環境省RDBでは準絶滅危惧に、東京都のRDBでは絶滅危惧ⅠB類(あきる野市)として記載されている。
ヤマトセンブリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F11 1/80秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:東京都あきる野市 2014.5.6)
ヤマトセンブリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:東京都あきる野市 2014.5.6)
ヤマトセンブリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:東京都あきる野市 2014.5.6)
アカハライモリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 1000 +1/3EV(撮影地:東京都あきる野市 2014.5.6)
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