山梨県忍野村にある「忍野八海」は、富士山の伏流水に水源を発する湧水群で、国の天然記念物並びに環境省の名水百選に指定され、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部として世界文化遺産にも登録されている場所。紅富士を堪能した後に、久しぶりに寄ってみた。
どこまでも澄んだ水に、心清らかになる。いくつかの池を散策すると、伏流水に揺れる水草に目が留まった。水の透明感と清涼感、そして水草の緑が美しい。しかし、それだけではない。「ゆらぎ」に心奪われたことに気付く。揺らいでいるからこそ美しいと感じたのだ。手ぶらで散策していたので、遠くに止めた車までカメラを撮りに戻った。さあ、このパワースペクトル密度が周波数 f に反比例する「ゆらぎ」をどう写して表現するか?他の観光客が池全体を風景として撮っている中、私一人だけ池の中の一部分にカメラを向ける。美しいと思う気持ちを頭の中で理論的に整理して完成図をイメージするが、動画ならともかく、写真となると現実をイメージ通りの作品にするのは、やはり難しい。
まずはCPLフィルターで水面の反射を取り除く。ピントはシャープさよりもボケ味が生きるF3.5を選択。「ゆらぎ」は数千分の一秒という一瞬でもないし、長時間露光でも表現できない。1/5秒というシャッタースピードが水草を適度にぶらし、柔らかな動きが出た。しかし、絵にならない。丁度良い具合にやってきた鯉を脇役にして流れの方向性を強調し、尾の部分のわずかな波紋で水の存在感、透明感を出してみた。そして現像時に色調やコントラスト、明瞭度等を補正して、写生的写真ではなく創作的な絵画風に仕上げたが、結局、訳の分からぬ写真になってしまった。
「自然風景写真」は、自然と撮影者が創りだす芸術。観察眼だけでなく、感性と技術が求められる。私には「美しさ」を一枚に表現し「作品」として完成させることに、多くのものが欠けているのだと実感する。もっと「風景と対峙」しなければ・・・今年の最重要課題である。
水草と鯉
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/5秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:山梨県南都留郡忍野村 2014.1.3)
こんにちは。
またひとつ、新しい課題を見つけられましたね。
「ゆらぎ」の傑作を期待しています。
多摩NTの住人様、こんばんは。
今回の写真は、今までにない感じの絵になったので掲載しましたが、何に感動したのか、それをどう写し込むか、構図はどうするのか、人に伝えることができるのか・・・色々と悩みます。
今年もストイックですね。
絵画のようで、とても趣があります。
Udagawa氏に、そう言っていただけると救われます。
こんばんは。
いつもとちょっと違ったお写真で一瞬驚きましたが
綺麗な緑の水草の上をゆうゆうと泳ぐ鯉が
とても印象的でした。
斜め上に泳いで行く鯉の姿と水草の池の水に揺らいでいる
様子が構図的にとても良いと思いました。
granma様、こんばんは。
「いつもとちょっと違った写真・・・」確かにそうで、訳の分からない写真になってしまったのですが、どこか不思議な力があり、削除せずに公開しました。
賛否両論あろうかと思うのですが、何か感じていただけましたら幸いです。