カトリヤンマ(Gynacantha japonica)は、北海道南部から九州まで広く分布し、平地や丘陵地の細い流れや池沼、林縁の水田などに生息するヤンマで、夏に羽化し、その後は雑木林の中で過ごす。夕暮れや早朝に飛びまわり、文字通り蚊や小さな昆虫を捕食。昼間は、薄暗い藪の中で木の枝にぶら下がって休んでいる。秋になり成熟すると産卵時期を迎え、メスは午後になると稲刈りが終わった水田の畔などの泥の中に産卵、オスは水田の上でホバリングする今が旬のヤンマである。
カトリヤンマは、かつて普通に見られた種だが、圃場整備による水田の乾燥化や山裾の水田の放棄荒廃により、近年減少傾向が著しい。環境省RDBカテゴリにはないが、20の都県でRDBに掲載しており、関東では東京都と千葉県で絶滅危惧Ⅰ類に、神奈川県では準絶滅危惧種に選定している。
水田は元来、生物多様性に富み、周囲の環境とともに「里山」という豊かな生態系を維持する重要なもので、そこに生息するカトリヤンマは、ヘイケボタル同様に水田環境に適応した昆虫だ。彼らが絶えることなく生き続けているということは、今後の里山のあり方や稲作の農法を考える上での指針にもなる。一昨年は静岡県磐田市まで行って、昼間に藪のなかで休む未成熟個体や成熟したオスのホバリング、そして産卵の様子を観察したが、今年は神奈川県北西部の里山を訪れた。
訪れた里山は、郊外では極ありふれた田園風景の広がりを見せるが、水田の半数以上で化学肥料や農薬の使用を極力控えており、カトリヤンマをはじめモートンイトトンボやヘイケボタル等、絶滅が危惧される水生昆虫が多種類生息している。
この日は14時に現地入りし、水田脇の農道を散策。15時になると一頭のカトリヤンマのオスが現れ、稲刈りの終わった水田の上で狭い範囲を忙しなく移動しながらホバリング(静止飛翔)を開始。10分ほどすると、どこかに飛んで行ってしまった。その後、16時まで待機したが、オスは現れず、またメスも産卵には来なかった。場所、時間、あるいは時期の問題か?
その後、チャンスがあったので産卵の様子を撮りに行ってみた。15時に1頭のメスが飛んできたが、産卵場所は稲刈りが終わっていない水田。稲の中に隠れてしまってまったく見えない状況。この地区での撮影は諦めることにした。
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:神奈川県北西部 2013.10.14)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 250 ストロボ使用(撮影地:神奈川県北西部 2013.10.14)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/200秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:神奈川県北西部 2013.10.14)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 640(撮影地:神奈川県北西部 2013.10.14)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 800(撮影地:神奈川県北西部 2013.10.14)
こんばんは。
ヤンマを見るとわくわくしますね。
複眼の色がスゴイです。
こんばんは。
いつも、飛翔しているトンボ、ピタッと止めて綺麗に撮影されているのを見せて頂いて感動しています。
植物もそうですが、昆虫も里山の最近の環境変化で姿を消しつつあるのですね。
カトリヤンマの目の色と体の草緑がとても綺麗ですね。
そして翅の後ろの体の細い部分(何と呼ぶのでしょう?)が
濃紺でトンボ全体の色合いが私の好みです。
(こういうコメントおかしいですね。)
Udagawa氏、こんばんは。
子供の頃は、家の近くでもたくさんいたんですがね~。
今では、すっかり珍しいヤンマになりました。
飛んでいる姿を目の前で見ると、やはりワクワクしますね。
granma様、こんばんは。
カトリヤンマを気に入ってくださり、ありがとうございます。
目の前で、かなり長い時間飛びながら静止しているので、比較的撮影しやすいトンボです。
以外と小さく、また腹部が細いのが特徴なので、青緑の複眼と緑の胸部が目立ちますね。
昔は、たくさんいたのですが、ホタル同様に少なくなってしまいました。