東京都あきる野市に生息するムカシトンボの撮影に成功した。
ムカシトンボ(Epiophlebia superstes)は、ムカシトンボ亜目(Anisozygoptera)ムカシトンボ科(Epiophlebiidae)に属し、体長は5cmほど。1億5千万年前に生息していたトンボの仲間に近い形態をしているところからムカシトンボという名前がついている。いわば「生きた化石」で、山間部の源流域(水温15℃以下)に生息している。幼虫の期間は6~7年とも言われ、羽化前の1ヶ月ほどは、渓流の中ではなく、川岸の湿った落ち葉の下で過ごすというたいへん希な生態の持ち主である。成虫は、草木に止まる時は、写真のように翅を閉じるのが特徴でもある。
北海道から九州までほぼ全国に分布しているが、日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみで、他の地域には分布していない。東京都では、南秋川水系、南浅川水系等の支流源流域に生息し、4月下旬~5月下旬に観察することができる。
午前9時に探索を開始した時は、まだ1頭も発見できなかったが、午前11時頃になると、ムカシトンボが渓流の上を飛び始めた。水面上50cmくらいの所、或いは5~6mほどの高い所を飛びながら、カゲロウなどの昆虫を捕らえていた。捕らえると、木の葉に止まり食べるという行動を繰り返していた。午前中は高い所を飛翔し、捕食行動をとり、午後になると川に入ってきて縄張り飛翔するらしい。2日に訪れたときは、1頭だけしか確認できなかったが、本日は6頭ほど、しかも比較的狭い範囲で飛翔しているのを確認した。午前中の早い時間は、杉林などの茂みで休み、気温が高くなる昼近くになると飛び出すようである。写真を撮ったムカシトンボも、日の光に当たり体が温まったのか、翅を広げ、ゆっくりと羽ばたいて飛んでいった。
ムカシトンボは、幼虫期が長いので、自然環境も長期間安定していなければ生息できない。かつて、たくさん生息していた青梅市のある沢では、ある時期を堺に絶滅してしまった。また、生息地として有名な裏高尾も、ハイキング、キャンプ、乱獲などの影響で激減している。このあきる野市の生息地においても、「バーベキュー禁止」という立て看板があるにも関わらず、河原を汚す非常識な家族連れがいる。エコ・ツーリズムとは何かということを考え直して欲しいと思う。
ムカシトンボの生息する沢
Canon EOS 7D / SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 400(撮影地:東京都あきる野市 2010.05.05)
ムカシトンボ(Epiophlebia superstes)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2010.05.05)
ムカシトンボ(Epiophlebia superstes)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 640(撮影地:東京都あきる野市 2010.05.05)
ムカシトンボ(Epiophlebia superstes)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/2000秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2010.05.05)
ムカシトンボ(Epiophlebia superstes)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 1250(撮影地:東京都あきる野市 2010.05.05)
ムカシトンボ(Epiophlebia superstes)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 400(撮影地:東京都あきる野市 2010.05.05)
追記:ムカシトンボを追いかけていて、河原で転倒。カメラをかばって左肘を岩に強打し捻挫。現在、肘が曲がらないほど、腫れ上がっております。皆様、虫を追いかける時は、下もよく見ましょう。
ムカシトンボ、かっこいいですね。
肘をお大事に。
ありがとうございます。今年は、ギフチョウにムカシトンボと子供の頃から憧れていた昆虫に会うことが出来て、とても嬉しいのですが、肘が激痛でたまりません。
初めまして
ブログへの訪問ありがとうございます。
5月1日はクロサナエ・ヒメクロサナエ狙いだったので、ムカシトンボは撮れたら撮るという感じでした。
多産地でないのでムカシは生息環境を見たかったのです。
自分の住んでいるところは、海抜0mから986mの瀬戸内海に面したところで、渓流のトンボを狙うなら少し遠出が必要になります。
ホタルは、自分の育った海際でもいましたが、環境の変化で湧水も出なくなり今は居なくなっています。
ゲンジボタルは車で5分も走れば見ることが出来ます。
家の周りでのチョウ&トンボを撮って楽しんでいますが、今年からは30Dから7Dにバージョンアップして少しずつ撮影種を増やしていきたいと思っています。
これからもよろしくお願いします。
拙いブログにお越し下さいましてありがとうございます。
自然環境に恵まれた所にお住まいなのですね。とても羨ましい限りです。こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
はじめまして。
拙ブログにおいで頂き有難うございます。
まだそちらは良い環境が多く残っているのですね。
いつまでもこの環境が維持されることを心から願っています。
近いのでそちらのフィールドにお邪魔することもあるかもしれません。
これからも素晴らしい写真を期待しております。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
お越し頂きありがとうございます。ムカシトンボもホタルも水槽の中の生き物ではなく、自然環境あっての存在です。保全のためにできることを考えたいと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。